「サステナビリティ新時代」の幕開け
パネルディスカッションには、筆者の紹介で、伊藤園でCSRを推進する笹谷秀光常務執行役員と、フランスのシュナイダーエレクトリック社でアジア地区の社会的責任分野を担当するメリアム・ケロー氏が登壇した。
伊藤園は、前回本連載記事でご紹介したように、次世代CSV(共通価値の創造)であるJ-CSVの代表企業である。笹谷常務は、非財務情報について、ESGがすべての面で重要と主張。昨年はパリ協定でE、国連持続可能な開発サミットが2030年の目標として掲げるSDGs(Sustainable Development Goals)によってEとS、そして日本においてもコーポレートガバナンスコードを通じてGが、それぞれパブリック・アジェンダとして決定づけられた。したがって今年は、ESGやSDGsなどに対応すべき「サステナビリティ新時代」の幕開けであり、経営情報を、世界的な指針を活用して「自分事化」して発信できるかどうかが経営戦略の要諦であると説く。
日本企業には、古くから「三方よし」という経営哲学が脈々と受け継がれてきた。しかし同時に「隠徳善事」が美徳とされてきたが、これでは世界に伝わらない。そこで、笹谷氏は「発信型三方よし」を提唱する。価値創造のストーリーを全社的に共有するとともに、投資家とも積極的に対話して「顔の見える企業」になるべきであると論じる。まさにJ-CSVの旗手らしい直球ストライクの提言といえよう。
ヒト・モノ・カネを現地でじっくり育てる
一方のシュナイダーエレクトリックは、日本ではあまり知られていないが、100カ国以上でエネルギーマネジメント事業を展開している超優良企業だ。筆者の近著『成長企業の法則~世界トップ100社に見る21世紀型経営のセオリー』では、トップ50位にランクイン。今年9月に米フォーチュン誌が発表した「“Change the World”ランキング」でも24位につけている(なお、伊藤園は18位)。
同社は、約3兆円の売り上げの半分近くを、アジア・アフリカなどの新興国で稼いている。そこでの同社の企業理念が、「Access to Energy」だ。12年時点で世界の13億人が、基本的な人権であるエネルギーへのアクセスを持てていない。同社は新興国において、このような状況を改善すべく、「BipBop」というプロジェクトを展開している。