有名不動産業者に蔓延する詐欺的「囲い込み商法」 売り主と買い主両方に多大な損失(前編)
競争激化の賃貸住宅市場
人口減少の悪影響がますます顕著になるといわれる内需産業ですが、私たちに身近な「衣食住」の分野では、住宅関連の不動産業界が最も大きな転換期を迎えているといわれます。
2013年の日本の人口は1億2724万人でしたが、10年後の23年に1億2200万人に、20年後の33年1億1400万人、30年後の43年に1億400万人となり、35年後の48年には1億人の大台を割り9913万人になると推計されています(国立社会保障・人口問題研究所の中位推計より)。
こうした人口減少・少子高齢化の影響を受けて新設住宅着工戸数も減少気味ですが、なにしろ全国的に住宅がすでにあり余っています。
総務省が5年ごとに公表する「住宅・土地統計調査」における空き家率は、調査のたびに増え続けています。1963年に2.5%、73年に5.5%、83年に8.6%、93年に9.8%、03年に12.2%、08年に13.1%と増え続け、ついに13年には13.5%を記録するまでになっています。すなわち、全国の6063万戸の住宅ストック中、820万戸が空き家というわけです。このうち、賃貸住宅だけに限定すると、13年時点で1841万戸中、429万戸が空き家なので、空き家率は一般住宅よりはるかに高く、23%に上っています。すなわち賃貸物件の4件に1件が空き家ということになるわけです。
青息吐息の家主が激増
アパートやマンションを長く経営する家主さんにインタビューすると、決まって返ってくるのが「ここ10年で賃貸住宅の需給は急速に緩んでいる」という実情です。2~3月の引越し繁忙期を外れて賃貸物件に空きが生じると、内装・クリーニングを済ませた後に入居者募集をかけても3~4カ月程度の空室期間はザラで、中には半年から1年にわたって空室のままという物件も少なくないといいます。当然、家賃の値下げ競争も激しさを増しています。
入居者が2年の契約更新期を迎える頃には、入居物件の周辺家賃相場は5~15%も下落しているという有様だからです。そのため、更新期を迎えたちゃっかり入居者の中には、「更新料をタダにして、家賃を10%下げてくれないなら退去する」と家主に申し入れをするとその要望がたちまち通ってしまうなど、入居者にとっては大変オイシイ激戦区もあるということです。こんな時代が来ると、家主もウカウカしてはいられないでしょう。
莫大な借金をして、マンションやアパートの一棟もの物件を建てた家主さんの多くは、いまや戦々恐々という時代を迎え、日本全国の家主さん共通の悩みが「空室・空き家」問題に集約されるにいたっているのです。