自分の1票で政治は変わらないと思っている。
また、そもそも政治に興味がなかったり、よくわからない。政治について話すと怒られる。
こうした政治に対する意識からか、2016年以降の国政選挙の年齢別投票率で、20歳代の投票率が30%台で最も低くなっている。
さまざまな有権者の姿を知ることで、なぜ投票率が低いのか、なぜ投票に行くのか、行かないのか、その理由を明らかにしていくのが『有権者って誰?』(藪野祐三著、岩波書店刊)だ。
本書では、若い世代に向けて、選挙の仕組みや意義をわかりやすく解説している。
■「有権者」とは一体誰だろう? 4つのタイプ
「有権者」とは、選挙の権利を有する人のこと。この有権者を著者の藪野氏は4つのタイプに分けている。
1.消費者としての有権者
通常、あまり選挙にいかない人々の多くはこのカテゴリーに入る。棄権して1票を使うことなく消費する。
2.常連としての有権者
選挙にはいつも投票に出かける人々のこと。政治意識が低い場合もあれば、意識が高い場合もある。
3.顧問としての有権者
アドバイザーとして自治体運営に参加する人々。本書は高校生向けなので、年齢的に高校生がはたす有権者のタイプではない。
4.市民としての有権者
市民性を持っていて、選挙に際して、投票の権利と義務を果たそうと、公正、公平な視点から選挙に臨む人々のこと。
この4つを政治意識が高い順に並べると、「市民としての有権者」「顧問としての有権者」「常連としての有権者」「消費者としての有権者」の順となる。あなたはどのタイプの有権者に当てはまるだろうか。
ただ、18歳になり、有権者となったばかりで「選挙に出かけよう」という意識を最初から持つことは難しいかもしれない。まずは公共性を身につけた考え方を持つ市民性を備える。この市民性が備わった時点で、有権者としての意識が芽生えるという。
選挙への意識を持つためには、まずその基礎となる市民教育が必要であり、投票という行為は、市民性を発揮する一つのツールであると藪野氏は述べるのだ。
2015年に選挙権年齢が満18歳に引き下げられた。選挙に参加できる18歳になれば自分も有権者であると当事者意識を持つことも大事なのだろう。
本書は上記のように若い世代向けの一冊だが、上の世代にとっても知っておくべき選挙のことが書かれている。選挙について勉強したい人にはうってつけの一冊だ。
(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。