7年間ダメ営業マンだった私が、嘘みたいに突然トップ営業に変身した「トーク術」
かつてハウスメーカーのダメ営業マンだった私は、「お客様に対して、できる限り商品のメリットを伝えなくてはならない」と信じ込んでいた。当時の私は出会ったお客様に対して、
「基本構造として●センチの強靭な鉄骨を使用しております!」
「部屋の隅から隅まで窓が取れるのは当社だけです!」
と力説していた。これは研修で教え込まれたマニュアルトークの一例であり、研修後もロールプレイで何度も何度も訓練してきたもの。まさか、「これを話せば売れる」と信じていたマニュアルトークが自分の足を引っ張っていたなんて、夢にも思っていなかった。
お客様はそんな話を聞きに来ているわけではないし、そもそも「営業マンはいいことばっかり言って、信用できないヤツばかりだ」と思っている。そこへ商品の良さを力説したところで逆効果になるのは容易に想像できるはず。
しかし、当時の私は思い込みと洗脳により、疑うことすらしなかった。こうして7年もの間、ダメ営業マンとして地獄を味わう羽目になったのだ。
トップ営業マンは「出会ってすぐのお客様は営業マンの話を聞かない」ということをよく知っている。間違っても、聞かれていないメリットを勝手に説明するなんていう愚行はしない。まずは警戒心を解き、「この人から話を聞く価値がある」と思ってもらうことに集中するのだ。
自分の特徴を端的に伝える
では、トップ営業マンは具体的にどんなトークをしているのだろうか?
私はコンサルタントという職業柄、数多くのトップ営業マンとお会いする。トップ営業マンにもさまざまなタイプの人がいる。
・パワフルで饒舌なタイプ
・口数は少ないがコツコツとやるべきことをするタイプ
・人に好かれ、人脈をつくるのがうまい人
・家族的な付き合いをして紹介受注が多いタイプ
まさに十人十色。個性あふれるトップ営業マンでも、共通点はある。
それは、「自分の特徴を端的に伝えるのがうまい」ということ。言い方はいろいろとあるが、とにかく短時間でスパッと自分の特徴、そして「ほかの営業マンとの違い」を伝えているのだ。大手ハウスメーカーのトップ営業マンは、お客様にお会いしたときに必ず、
「はじめまして●●と申します。私は現場監督を5年ほどやっていましたから建物の隅々まで知っています。なんでも聞いてください」
と自己紹介する。これを聞いたお客様はどうだろう? 「現場監督を5年間もやっていたのかぁ。ただの営業マンではなくプロだ」という印象をもつ。この一言でその他大勢の営業マンから一歩抜けだしている。その後も優位に話を展開させるのだ。
また、長年トップの成績を継続している生命保険の営業マンは、
「私はこの業界に入って35年ですから、酸いも甘いも知っています」
と伝える。この一言で、「ただのおじさん」から「実績があり安心できる人」に変わるという。確かに「最近生保の営業を始めました」という営業マンより信頼できそうだ。
とにかく言い方はそれぞれ異なるが、トップ営業マンはお客様と出会ったとき一瞬にして「そのへんの営業マンとは違う」とお客様に伝える工夫をしている。一瞬にして優位なポジションに立っているのだ。
多くの営業マンがいるなか、「お客様はどうしてあなたを選ばなくてはならないのか?」について、じっくりとその理由を考えてみる。そしてその理由をお客様に10秒以内にわかりやすく伝えられるトークをつくってほしい。このトークが完成した時、別世界が広がることに驚くだろう。
(文=菊原智明/営業サポート・コンサルティング代表取締役)