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ソフトバンク・東浜巨、甲子園で見せた驚異の安定感…5試合で失点わずか3、防御率0.66

文=上杉純也/フリーライター
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東浜巨(「Wikipedia」より)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、選抜高等学校野球大会(センバツ)すなわち春の甲子園が開催されず、プロ野球も開幕時期が見通せない状況が続いている。そこで、野球好きの読者のために、「春の甲子園にしか出場していないが、その後プロに進み、活躍した選手」を紹介するこの連載。第5回は東浜巨(ひがしはま なお/福岡ソフトバンクホークス)。

 2012年のドラフト会議で福岡ソフトバンクホークス、埼玉西武ライオンズ、横浜DeNAベイスターズの3球団から1位指名を受け、抽選の結果、ソフトバンクに入団した東浜巨。3球団競合だったことからもわかるように、東浜は同年ドラフトの目玉投手であった。そんな東浜が最初に注目されたのは、08年の第80回選抜高校野球大会である。

 前年の07年秋、東浜は沖縄尚学高校のエースとして獅子奮迅の活躍を見せていた。なんと県大会と九州大会で51回3分の1イニングを投げ59奪三振、与四死球9、防御率0.88という好成績をマークしたのである。この抜群の安定感の源は、打者のタイミングを外す絶妙な投球術と試合中の修正能力の高さ。そして何より、打たせて取るピッチングを主体としていることにあった。そして選抜で東浜は噂通りの投球を披露し、大会の主役の座を独り占めすることとなるのである。

 注目の初戦の相手は聖光学院(福島)だったが、いきなり東浜はその才能を遺憾なく発揮した。試合は先攻を取った沖縄尚学が初回に聖光学院先発・仲田の立ち上がりを攻め、1番・伊古が右中間への二塁打で出塁。この走者をバントで送り、1死三塁のチャンスを掴むと、なんと3番・西銘の場面で仲田がボークを犯し、思わぬ形で先制点が転がり込んだ。だが、これ以降、沖縄尚学打線は仲田の前に沈黙し、なかなか追加点が奪えない。そんな苦しい展開で踏ん張ったのがエース・東浜だった。

 相手打線には自軍のヒット数4を上回る7安打を浴び、5回裏には2死満塁、6回裏にも1死一、二塁のピンチを招いたが、ここで自慢のツーシームを駆使。冷静な投球で打たせて取るピッチンクで要所を抑え、零封したのだ。さらに試合終盤には自己最速147キロもマーク。結局1回表の1点を守りきって2回戦進出を決めたのである。

 続く2回戦も明徳義塾(高知)相手に粘り強いピッチングを展開。初回に3番・西銘の2ランで先制するなど3点のリードを奪うとまたも被安打7ながら1失点に抑え3対1の完投勝利を収める。準々決勝の対天理(奈良)戦は3対2と1点勝ち越した直後の5回裏から先発・上原亘を受けての救援登板。5回を被安打4の無失点で抑え4対2で勝利。チームのベスト4進出に貢献したのだった。

東浜の真骨頂は驚異の安定感

 だが、この準決勝で東浜は、この大会でもっとも苦投することとなる。東洋大姫路(兵庫)との一戦は立ち上がりから不安定なピッチングで、1回表2死から先制を許すとそのまま相手エース・佐藤との投げ合いになる。互いに走者は出すものの、要所を抑え相手に得点を許さない。緊迫の投手戦が続くなか、0対1のまま迎えた7回表。東浜は相手の下位打線に長短打を浴び、痛い1点を追加されてしまう。そして試合展開からこのまま東洋大姫路に押し切られるかと思われた。

 ところが、土壇場の8回裏。過去3試合を1人で投げてきた東洋大姫路の佐藤を沖縄尚学打線がようやく捕らえることに成功。7回まで4安打に抑えられていたものの、2死ながら一、三塁のチャンスを掴むと、ここから2本の適時打が飛び出すなど、一挙4得点を挙げたのである。東浜はヒット8本を浴びながら与えた四死球はわずかに1つで決定的な失点を許さなかった。対する東洋大姫路の佐藤は勝負どころの場面で2四球に暴投と制球力を乱してしまった。制球力を乱さなかった東浜に軍配が上がったのは当然の結果だったといえる。こうして4対2で鮮やかな逆転勝利を飾った沖縄尚学が決勝戦へと駒を進めたのである。

 迎えた決勝戦の相手は初出場の聖望学園(埼玉)。この初陣チームに沖縄尚学打線は初回から襲いかかっていった。先頭の伊古が右中間三塁打を放つと、直後に暴投であっさりと先制。2回裏には四球で出た走者が盗塁し、連続犠打で加点するソツのない攻めを見せる。さらに3回裏には中軸の西銘、仲宗根の連打に加え、波照間、新垣の長打攻勢も飛び出し一挙4得点。前半で完全に主導権を握ったのだった。

 そしてこの打線の援護を受けた東浜は、またも“らしい”ピッチングを見せる。被安打6に四死球3を与え、3回以降毎回のランナーを許すも要所を抑えていった。特に7回表は無死一、二塁から最後は2死満塁までいくピンチを招いたが、落ち着いて後続を断った。結果的に9対0の圧勝。東浜は今大会2度目の完封勝利で見事、優勝投手に輝いたのである。沖縄尚学にとっては1999年春以来、9年ぶり2度目の甲子園優勝であった。

 結局、この大会で東浜は5試合で41回を投げ、失点わずか3、防御率0.66と驚異の安定感を発揮、一躍ドラフト1位指名の有力候補に名乗りを挙げた。だが、春夏連覇を狙った夏は県大会決勝戦進出を果たすもライバル校の浦添商に2対5で敗れ、その夢は断たれてしまう。

 その後、高校を卒業する際、プロ志望届は出さずに大学進学。亜細亜大を経て12年のドラフト1位で、前述したようにソフトバンクに入団した。以来、今までに40勝(23敗)をマークするも、二ケタの勝ち星を挙げたのは17年の16勝のみ。昨シーズンに至っては股関節と右ヒジのケガに見舞われ、わずか7試合の登板に終わっている。1日も早いケガからの復帰、そして高校時代の安定感あるピッチングを取り戻すことを願っている。

上杉純也/フリーライター

上杉純也/フリーライター

出版社、編集プロダクション勤務を経てフリーのライター兼編集者に。ドラマ、女優、アイドル、映画、バラエティ、野球など主にエンタメ系のジャンルを手掛ける。主な著作に『テレビドラマの仕事人たち』(KKベストセラーズ・共著)、『甲子園あるある(春のセンバツ編)』(オークラ出版)、『甲子園決勝 因縁の名勝負20』(トランスワールドジャパン株式会社)などがある。

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