球春到来である。2月1日、プロ野球各球団のキャンプが一斉にスタートした。その中で今年、最も注目を集めている選手のひとりに、東北楽天ゴールデンイーグルスにドラフト1位で入団した安樂智大(愛媛・済美高校)が挙げられる。
済美高時代は2年生時、春の選抜高等学校野球大会で準優勝を果たし、同夏の全国高等学校野球選手権大会の愛媛県予選では球速157キロを記録した。3年生時は肘の故障もあり、甲子園出場は果たせなかったが、昨年のドラフトでは東京ヤクルトスワローズと楽天の2球団が競合した逸材だ。
15年ほど前まで、プロ野球のキャンプは読売ジャイアンツ(巨人)の話題一色だった。だが、最近では、スポーツニュースやスポーツ新聞を見ても、巨人よりもパシフィック・リーグ球団の選手が取り上げられる機会のほうが増えている。スポーツライターが話す。
「最近、ドラフトで話題性のある高校生は、ほぼパ・リーグに入団しています。ここ10年ほどでは、ダルビッシュ有(北海道日本ハムファイターズ~現テキサス・レンジャーズ)、田中将大(楽天~現ニューヨーク・ヤンキース)、菊池雄星(埼玉西武ライオンズ)、大谷翔平(日本ハム)、松井裕樹(楽天)、そして今年の安樂です。驚くことに、巨人はこの甲子園スター6人を指名すらしていません。球界の盟主を自任する球団がスター性のある選手の獲得に動かないことに、首をかしげたくなります。
2009年にドラフト1位入団した大田泰示(神奈川・東海大学付属相模高校)や、今年ドラフト1位入団した岡本和真(奈良・智辯学園高校)は、確かに超高校級の素材ですが、アマチュア時代に華があったわけではありません。スーパースターになり得る素材の獲得を初めからあきらめていては、現在の人気低迷もうなずけます」
メジャー志向派は巨人を避ける?
だが、巨人には巨人なりの理由があるようだ。球界関係者が話す。
「昔であれば、清原和博や元木大介のように、華のある高校生は巨人入りを熱望していました。しかし、今の高校生の夢はメジャーリーガーになることが主流です。菊池や大谷は、最初から日本の球団を経ずにアメリカ行きを模索していたほどです。
そうなると、巨人は彼らを指名に行けなくなります。巨人はポスティングを認めていませんし、自軍を去り、メジャーに行った選手のことをよく思わない球団です。松井秀喜でさえ、引退するまでは快く思われていなかったほどです。今は、巨人が松井の人気にすがらなければ厳しいと考え方を改めましたが、これまでの経緯もあり、松井は巨人に利用されることにあまり乗り気ではないのです」
要するに、巨人に入団してしまうと、メジャーへ行きづらくなり、少なくとも若いうちの挑戦は難しい。となれば、将来のことを考え、ポスティングで絶頂期に挑戦させてくれるパ・リーグの各球団は何よりも魅力的なわけだ。
「ダルビッシュ、田中将大は、共に25歳で渡米しました。このような前例がありますから、今後もメジャー志向のスーパースター候補生たちは巨人には行きたがらず、巨人も指名する可能性は低いでしょう。ここ数年のキャンプ報道を見ればわかるように、マスコミも話題の少ない巨人ではなく、新しいスター候補生を取り上げます。したがって、ますます巨人の人気は下がっていくと考えられ、すでに球界の下克上は起こっているのです」(同)
一昔前は、巨人よりもパ・リーグ球団に行きたがる選手の存在など、皆無に近かった。野球グローバル化の波は、国内球団の勢力図まで変えているのである。
(文=編集部)