歴史は繰り返す。そして相場も繰り返す?
株価の値動きには、毎年一定の季節性が見られます。
毎年秋に波乱が起き、11月頃に底入れ、その後ゴールデンウイーン頃まで強く、夏にかけてひとつ、ふたつ、小さな山を付け、また秋に波乱……というパターンになる傾向があります。2010年、11年もそうでした。
ただ、世界的な金融危機が深刻化した場合は、1~3月に再度波乱が起き、春に底入れ、その後年央高を経て、また秋に波乱…というパターンになりやすく、08年、09年がそうでしたね。今年はギリシャ問題はじめユーロ危機が払拭されなければ、このパターンになる可能性が高いかもしれないと思っていましたが、ユーロ圏も危機克服に向けて重い腰を上げ、このパターンではなく、10年、11年のパターンになったようです。2月14日に表明した日銀のバレンタインデープレゼント=インフレターゲット設定(?)を含む追加金融政策も株価の下支えに効いていますね。
ただ、今年は例年のようにゴールデンウイーク後に調整とはならず、1カ月早く4月に調整が訪れました。
毎年秋に波乱になりやすいのは、ヘッジファンドなど世界のマネーを動かしている勢力が、年末に向けて決算を迎えるため、どうしても売りが出やすいという季節的な要因があるためですが、「秋は怖い」という歴史的トラウマも関係している模様です。
戦前の世界大恐慌も1929年秋から始まりましたし、87年のブラックマンデー、01年の世界同時多発テロ、07年の欧米銀行のサブプライムローンによる損失表面化、そして08年のリーマンショックも、なんとすべて秋に起きました。「秋は怖い」という心理的な要因も、尾を引いているのでしょう。
もうひとつ、秋が波乱になりやすい要因があります。それは3月期決算企業の第2四半期(4~9月)の決算発表時期に当たっていることです。株式投資家は、決算発表時期は本当にやりづらいというのが実感でしょう。決算発表前に好決算期待銘柄の先回り買いが入り、実際に好決算が出たら、好材料出尽くしから売られてしまい、全体の相場が調整するケースが多いからです。仮に全体相場が調整されていなくても、好決算が出た場合、好感して上げる銘柄もあるし、逆に出尽くし感から売られる銘柄もあるし、反応が読みづらく、リズムが崩れることが多い。
ですから、僕は秋に限らず、3カ月ごとに訪れる決算発表シーズンはあまり強気に取引せずに、じっくり研究する時間帯にすべきと割り切って考えています。
3月期決算企業の四半期ごとの決算発表時期は1月下旬~2月中旬、4月下旬~5月中旬、7月下旬~8月中旬、10月下旬~11月中旬です(12月期決算企業も同様)。ただ、この決算発表シーズンを過ぎると、やりやすくなります。決算発表シーズンに相場が調整されていることが多く、再スタートを切りやすいというリズムもありますし。
僕自身、個人投資家向けにセミナーを開くことも仕事のひとつですが、その場合は、決算発表シーズンが終わった頃に開催するようにしています。昨年は11月26日に行いましたが、その後、相場は反転しましたから、いいタイミングでした。今年は2月18日に開きましたが、これもいいタイミングになりました。
僕自身が銘柄推奨する時期で最も自信があるのは、年末年始相場と、2月中旬~ゴールデンウイークまでの相場です。年末年始は秋の波乱を越え、売るものも売って需給がよくなっているからです。2月中旬~ゴールデンウイークまでは、まず、3月期末までは、3月期末配当(ただし、今年は3月27日が配当取り権利付き最終日で、すでに通過しています)を狙えますし、なおかつ、上方修正の可能性が高い銘柄を狙っていれば、それほど失敗はありません。期末配当を狙ってもいいし、上方修正で株価が値上がりしたら、配当取りはやめて、値上がり益を狙ってもいい。うまく行けば、配当と値上がり益の両方を取れるかもしれません。つまり広い戦い方ができる季節だからやりやすい。4月は上方修正の可能性が高い銘柄の押し目を狙う作戦です。
次にやりやすいのは、ゴールデンウイーク後の決算発表が一巡したあと。このときは決算予想数字がいいものから銘柄を絞り込みます。さらに第1四半期(4~6月期)の決算発表が終わった8月のお盆のあともやりやすい。このときは通期利益予想に比べ、業績進ちょく率の高いものを選んで取り上げます。
でも、例年、そのあとが大きな波乱になることが多いんですよ。そう…先ほど書いた秋の波乱です…。
ただ、今年はひょっとしたら、多少の波乱はあるかもしれないけど、大きな波乱が起きるパターンにならないかもしれないと内心期待しているところがあります。
それはなぜか?
00年以降、秋に大きな波乱がなかったのは、03年と05年。03年はITバブル崩壊以降、基調的に約3年も下げてきたことに対するリバウンドという面もありますが、当時の小泉政権の経済政策が、淘汰から再生に転換したことが大きかった。そして05年は小泉政権が郵政選挙で大勝し、構造改革期待が大きく盛り上がったことが要因です。
今年はこのパターンになる可能性があります。03年と同じように、さまざまな方面で政策転換が見えてきたからです。金融面では、日銀はインフレターゲット設定という政策転換を見せました。政治面では、総選挙があるかどうか今の時点ではわかりませんが、「維新の会」の台頭など、05年のように日本の政治が大きく変わる可能性もありますし、ユーロ圏も財政統合に向けた変革の道筋が見えつつあります。企業面では、電力料金値上げなどの悪材料もありますが、復興需要がようやく本格化、内需関連は堅調に推移すると見られますし、輸出産業の業績も回復する見通しで、珍しく内需、輸出がかみ合う年になりそうです。またリズム的にも、今年は03年と同じように例年より早めの4月に調整に入りました。5月まで調整が長引く可能性もあり、となると5月に安値を付けた05年と似たパターンになるかもしれません。
バブル崩壊後も数年ごとに新しいバブルはできています(その後は破裂していますが)。まだ全体の調整は続くでしょうが、これらの流れから見ると、この調整をうまく乗り越えれば、バブリー相場だった03年、05年に似た感触が出てくるかもしれません。
しかし、相場に対してはあまり期待しては負けかねないので、心の中で密かに期待しておくだけにとどめておきますが、証券人生約30年の経験から、今年は新しいバブルができるとまではいいませんが、何か明るい年になりそうな気配を感じています。
(文=岡本昌巳/経済ライター)