テスコジャパンは首都圏を中心に「テスコ」「つるかめ」などの名称で小型スーパーを117店舗展開している。不採算店舗が多く、従業員約1900人(パート含む)も引き継ぐことから株式の取得金額は1円と破格の値段になった。テスコは残り50%の株式も売却し、2段階方式で日本から完全に撤退する。
テスコは2003年7月、「つるかめランド」や「かめちゅーる」を運営するシートゥーネットワークを328億円で買収し、日本市場に参入した。その後、200億円を日本の事業に投資した。撤退にあたり、テスコジャパンの負債(200億円)はテスコ側が清算するほか、事業の再構築の費用として4000万ポンド(50億円)の追加投資を行う。
テスコグループの売上高は、約8兆4000億円(11年度)で小売業世界第3位。欧米14カ国で5400店を展開している。日本事業の売上高はおよそ500億円だが、業績の低迷が続いていた。そのため11年8月に日本からの撤退を表明、売却先を探していた。
イオンにとってのメリットは、取得価格が1円である上に債務はテスコが処理し、50億円の追加投資も行う点にある。イオンは小型食品スーパー「まいばすけっと」などへの業態の転換を検討する。
テスコの最大の失敗は、ディスカウントストアであるシートゥを買収したことにある。食品スーパーの商圏は小さい。人口が集中する地域に売り場面積の狭い店を展開する必要がある。一方、安さが売りのディスカウントストアは商圏が広く、店舗の大きさもバラバラ。テスコのように、売り場を標準化して本部主導で店舗を運営する企業が買収するには適していなかった。
テスコは当初、シートゥを買収する計画はなかった。複数の企業に買収を打診したが、いずれも断られ、やむなく獲得したのがシートゥだった。90年代後半から、欧米の巨大小売業の日本進出が相次いでおり、バスに乗り遅れたテスコの焦りが、買収先の選定を誤らせたといっていい。最初のボタンの掛け違いが最後まで響いた。