これによると、企業などの自家発電全国総量が5373万kW/時分ある。これは東京電力1社分の供給量に匹敵する。このほか、電力会社が大口消費者と契約している「需給調整契約」(電力不足時にピークカットする代わりに、平常時の電気料金を大幅割引する契約)の総電力量が、原発5基分(505万kW/時)に上る。契約通りピークカットをするだけで電力不足は起きない。しかも大口契約者の大半は自家発電設備を持っているので、大きな混乱が起きる恐れも少ない。
さらに企業の非常用電源も2300万kW/時分眠っている。これらの埋蔵電力を活用すれば、原発に頼らなくも今年の夏は電力不足にならないと報じている。
全原発停止でも供給に余力 – 週刊ダイヤモンド(ダイヤモンド社/2011年7月19日号)
昨年8月1カ月間で、西日本の大手電力6社の合計供給量が、ピーク時より約1500万kW/時も余力を持っている事実を明らかにしている。
原発ゼロの場合、6社合計の供給量は1万114万kW/時。一方、需要量が9767万kW/時。この需要量に、安定供給の目安となる各社の「供給予備率」を掛けると、合計で275万kW/時の不足。これが電力業界の言い分だ。
しかし、各社の資料から認可最大出力量と供給可能量の合計差をはじき出してみると、生産能力的には合計1486万kW/時の供給余力を持っていることが判明したのだ。同誌は「電力会社の言う電力不足には、数字的根拠がない」と断じている。
これらの調査報道を見る限り、電力不足どころか、逆に「電力余り」ではないかとも思えてくる。
なぜ政府と電力業界は正確な電力需給量を公表せず、不安を煽るようなキャンペーンを展開しているのだろうか? 発電燃料である天然ガスを、いまだに米・電力相場の数倍で購入しているなど、経営努力を怠る一方で、燃料費増などで赤字転落を防ぎたい電力業界の思惑と、原発を再稼働させたい政府(経産省)の思惑が一致した世論誘導との疑いを禁じ得ない。
少なくとも政府と電力業界には、「電力余り」を示唆する報道について、説明責任があるのではないか?
(文=福井 晋)