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今春の社長の交代ラッシュは、超円高で業績が悪化したことが直接の原因だ。業績が悪化して1000億円単位の大赤字を出しても「トップが責任をとった」と公表する企業はほとんどない。ある財界首脳は「記者会見などの公式の場で『引責辞任』を口にすれば、役員退職慰労金がゼロになるから、誰も本当のことは言わない」という。ここに、引責辞任問題の本質がある。
ところで、役員退職慰労金を月額報酬に組み入れて支払う企業が増えてきた。退職金の先食いである。これで引責辞任でも退職金がセーフになったのが、みずほフィナンシャルグループ(FG)の3首脳だ。
09年6月、持ち株会社みずほFGの前田晃伸社長(旧富士銀行出身、67)、傘下のみずほ銀行の杉山清次頭取(旧第一勧業銀行出身、65)、みずほコーポレート銀行の齋藤宏頭取(旧日本興業銀行出身、68)が同時に会長に退いた。合併にあたって3行の人事バランスを最優先してきたため、巨額赤字を出したみずほコーポ銀行・齋藤頭取の経営責任を追及すると人事のバランスが崩れてしまう。だから、3氏ががん首を揃えて辞任した、という経緯がある。
一般的に、役員退職金は株主総会の承認を得なければならない。従来であれば、役員退職金の支給をめぐって株主総会が紛糾するところだったが、みずほは役員退職慰労金制度を廃止し、月額に組み入れて支払う方式に切り替えていた。そのおかげではあるまいが、10年3月期の有価証券報告書によると3首脳とも1億円以上の役員報酬を得ている。
この例で見たように昨今では、退職金の有無がトップの退任後の生活設計に影響を及ぼすことは少なくなってきた。「引責辞任です」「院政を敷く権力者に首を切られたのです」などと、サラリーマン社長が本音を語ったら、ただのセレモニーと化している退任会見が、俄然、おもしろくなるのだが……。
(文=編集部)
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