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東京都国立市に藤波タオルサービスという老舗の「おしぼり」の会社がある。もともとは、ホテルやレストラン、居酒屋などにおしぼりを配達、使用済みタオルを持ち帰って洗浄し、翌日配達という事業が中心だった。しかし、これでは事業の拡張性が少ないので、初めての自社独自ブランド商品であるおしぼり用アロマ芳香剤「LARME(ラルム)」を開発、それが軌道に乗った2007年には、オリジナル新商品の「アロマペーパータオル」の商品化に成功し、PB(プライベートブランド)商品開発の重要性に目覚めたのです。
この商品開発を手掛けた同社戦略企画室長(当時)の藤波克之さん(現・代表取締役専務)は、拙著を読んで「中小企業こそ広報が必要だ!」と痛感、わざわざ私の事務所に来られた。私はその熱心さに感動、ブランドづくりをアドバイスした。
藤波さんは、キャッチフレーズとして「他には無い画期的な新商品・アロマおしぼり」という、他社製品との差別化を強調したプレスリリースを作成。できるだけ少ない文字数で、より強い、そしてより多くのコンセプトを込められるよう何度も練り上げ、読売新聞、朝日新聞、日刊工業新聞、日経流通新聞、日経ベンチャー(当時)など約30のメディアに現物サンプル付きで送った。その結果、日経新聞、日刊工業新聞や業界紙などの新聞をはじめ、雑誌などの取材も受け、多くのメディアに掲載。それを見たさまざまな関係先や地方からも問い合わせが殺到し、大手メーカーとの新規取引も生まれ業績が伸び、広報活動の持つ威力に驚いたという。
また、藤波タオルサービスはデザインスタジオを社内に設立し、06年からはブログ「おしぼりズム」を開設したり、07年からは社員による手づくりのマンガを制作している。自社を舞台として、現場の生々しい苦労や製品への愛情が描かれたこのウェブマンガは、『おしぼり人間ドビィーくん』というタイトルで大好評を博した。そこで新聞各社のほかに「News2u.net」(企業ニュースリリース専門サイト大手)などのニュースサイトに、「おしぼりブログ」「おしぼりマンガ」といった、一瞬で目を引きやすいキーワードを打ち出したプレスリリースを配信したところ、「日経レストラン」(日経BP社)、「モノ・マガジン」(ワールドフォトプレス)などの多数のメディアで取り上げられ、大きなPRとなったのだ。加えて、SEO対策(サイト検索エンジンで高順位に表示されるための対策)にもなった。
08年3月には「OshiboriーJapan」というブランドを立ち上げた。「OshiboriーJapan」とは、日本にしかない”おしぼりのおもてなし”を日本文化と位置づけ、五感をテーマに付加価値をつけた商品開発を行い、世界へプロモーションを推進するための独自のブランドである。ここでもプレスリリースを作成し、約60のメディアへ配信。その方法も工夫し、記者が朝来てすぐ目に触れるように、深夜配信も試みたところ、数日後、日経新聞から取材依頼があり、日経流通新聞で囲み記事として掲載される成果を得た。
その波及効果は大きく、立川経済新聞などのネット新聞にも掲載。その後驚くことに、日本テレビの『ぶらり途中下車の旅』から取材を受け、放映されたのである。ほかにも、フリーペーパーの「R25」(リクルート)にも掲載されたのを機に、前出のウェブマンガへのアクセスが急増、1日で1万件を突破する日も出てきた。