(「東日本旅客鉄道HP」より)
意外に思う人がいるかもしれないが、実は鉄道駅は、粗暴犯、凶悪犯の多発地帯である。2008年3月にJR荒川沖駅で起きた、「通り魔的犯行」である連続殺傷事件は記憶に新しい。同月には、JR岡山駅のホームで突き落とし殺人事件も起きている。また、99年9月に連続殺傷事件が起きたJR下関駅は、06年1月に放火されて駅舎が全焼した。今年に入っても、2月22日、渋谷駅で駅ビル「東横のれん街」前の通路で、女性が刃物で刺される事件が起きている。このほかにも、
・96年:JR池袋駅の山手線ホームで立教大学の男子学生が殺された事件(未解決)
・11年:JR高田馬場駅のホームで乗客同士の傷害事件。
などなど、枚挙に暇がない。運悪くそんな粗暴犯や凶悪犯に遭遇しなくても、駅での乗客同士のケンカ、駅員への暴行は、毎日のように繰り返されている。痴漢や迷惑行為も後を絶たず、1日に何万人もの乗降客が行き交う大都市圏の駅は、悲しいかな「子どもには見せたくない行為」で溢れている。
そんな駅という危うい場所に、自分の大切な子どもを預ける保護者が急増している。と聞くと耳を疑うかもしれないが、駅構内や駅に直結した鉄道関連施設に開設される保育所、通称「駅ナカ保育所」が、今、その数をどんどん増やしているのだ。
規制緩和で急増する「駅ナカ保育所」
冒頭の殺人未遂事件が起きた副都心線渋谷駅は、現在は東京メトロだけが乗り入れているが、今年度中に東急東横線渋谷駅がそっくりここに移転、東横線と副都心線の相互直通運転が始まる予定である。すでに東急の子会社が駅を管理し、犯行現場は事実上東急の駅である。その東京急行電鉄も東京メトロも「駅ナカ保育所」を開設している。
東急は、たまプラーザ駅や綱島駅など12カ所で「パレット保育園」などの保育施設を運営。東京メトロは、4月に東西線原木中山駅高架下に「キッド・ステイ」をオープンさせた。同月に東武、西武、京成も相次いで保育事業への初参入を果たしており、先輩格の京急、小田急、京王、相鉄と合わせると関東の民間鉄道会社をほぼ網羅する。関西も阪急、阪神が、すでに参入を果たしている。
荒川沖駅事件が起きた旧国鉄・JR東日本は、96年の国分寺駅を皮切りに駅型保育所の設置を進めており、4月現在49カ所。子育て支援施設を14年までに70カ所、ゆくゆくは100カ所にまで増やすのが目標である。同社は場所を貸すのみで、運営は外部に委託しているが、下関駅事件が起きたJR西日本は03年に子会社・JR西日本交通サービス直営で参入した。「駅ナカ保育室」と銘打った「JRキッズルーム」を京阪神の5カ所で運営している。
なぜ、鉄道会社は、こんなにも保育事業に熱心なのか。電車通勤が多い大都市圏では、通勤の行き帰りに子どもを預ける場所として、駅ほど便利なところはなく、立地条件がいいからだ。しかも保育施設は、「子育て支援」の名の下に、規制緩和がどんどん進んでいる。