(「Thinkstock」より)
ここドイツは、誰もが知るビール王国。多くの人にとってビールは生活の一部になっており、職場でもビールは切り離せない。特に私の住むミュンヘンは、ドイツ国内でも有数のビール産地。毎年9月に開かれる世界的に有名なビールの祭典「オクトーバーフェスト」には、各国から600万人もの観光客が集まる地域だけになおさらだ。
午前10時。早朝から働く職場では、「マールツァイト(Mahlzeit)」といって、この時間に15~30分ほどの休憩を取る。社員は食堂などで軽食を摂るのが習慣だ。ひと仕事を終えて、ほっとひと息つく社員らの手には、当然のようにビールを満たしたグラスが握られている。
「朝からビールを飲んでいいの?」と問いかける私に、「なぜいけない? ミュンヘンの朝食には白ビールがつきものさ」と、同僚は平然とした顔で言ってのけた。「日本ではありえないよ」と言うと「なぜ? ビールは水みたいなものなのに信じられない!」と不満顔。
ドイツのほとんどの会社の食堂には、普通に何種類かのビールが並んでいるから、休憩時間にビールを飲むのは、会社のお墨付きをもらっているようなもの。職種によっては控える人もいるが、よほど酔っぱらいながら仕事をしないかぎり、会社から口うるさく指導されることもない。
不文律は「仕事中はグラス1杯」なのだが……
もちろん、サラリーマンたちの間では、「仕事中はグラス1杯」というのが不文律になっている。しかし、ミュンヘンではそのグラスが通常500ミリリットル。私もドイツ流にと、朝の休憩時間にビールを”ほんのグラス1杯”飲んでみたが、最初はとても30分では飲めずに、ほろ酔い気分で職場に戻ったものだ。しかし慣れは怖いもので、1カ月もすれば同僚と同じようになっている自分がいる。笑いながら500ミリリットルを軽々と飲み干すほどに成長(?)した。
さて、12時になると、食堂では再びビールの時間がやってくる。テーブルの上には、もちろんグラスがずらりと並ぶ。ランチ時に「仕事があるから飲んじゃまずいかな」などと良心の呵責を口にする日本人サラリーマンにとっては、天国のような光景だろう。