超穴場スポット。(「ウィキペディア」より)
金谷氏がリーダーを務めるプロジェクト「東大就職研究所」の調査によると、「12年卒の東大生192人に聞いたところ、3月時点でいまだに6人が内定ゼロ」だと言う。二流三流大学からしたら少ない数字だが、本来前途洋々のはずの東大生の進路が決まっていないことに驚く。いったいなぜ、どの会社にも受からないのか?
「私自身もそうでしたが、東大生はややこしい自意識を持つ人が多く、面接官に『使いづらい』という印象を与えてしまう場合があるようです」(金谷氏)
たとえば、「東大生だけど、ガリ勉じゃない」と思われたいあまり、面接でいらんギャグを言い、スベりまくる。あるいは、「東大生だけどイヤミじゃない」ことをアピールしたいあまり、「バカを装って集団ディスカッションでコケる」といったイタイ行動をしてしまう。企業人事は、東大生にはストレートに東大生らしい「真面目で頭が良いという面」を求めるため、この奇をてらった行動がとみに大不評だと言う。
ちなみに金谷氏の場合は、「東大生だけど一風変わった子」だと思われたくて、「バイト先のカフェでバイト革命を起こしました!」などと、東大生には求められない次元の低い発言をして、失笑を買ったと言う。さらに、金谷氏によると、東大生は幼少の頃からひたすら問題集を解いてきた真面目さゆえ、「融通がきかないバカ正直者」が多く、これもまたアキレス腱になっているようだ。
「人事担当者に『ウチが第一志望?』と聞かれた時、正直に『大学院も国家公務員Ⅰ種試験も受けます』と答えてしまったり、『ウチは全員営業から始めてもらうけど』と言われて『興味ないです』と言ってしまったり、『嘘も方便』という考え方ができないんですよ」(同)
こうしたふるまいの背景には、「東大生なんだから文句ないだろ」と言わんばかりの傲慢さが少なからずあり、それが採用担当者には透けて見えるのだろう。多くの東大生を不採用にした経験を持つ、コンサルティング会社の採用担当マネジャーはこう語る。
「組織の仕事はチームワークが大切。採用するからには、チームで共に働きたいと思える人物でないといけない。ところが東大生の中には、『コイツとだけは働きたくない』と思わせるような性格の持ち主が、結構多いんですよね」
学力は高くても、常識ゼロの東大生
また、「東大生なのに内定ゼロ」の人の共通項として見られるのは、「就活サイトに頼り過ぎ」という点だ。
「自分の適性が生かせる会社に就職した人は、先輩など東大人脈を使ってインターンをするなど、『アナログな就活』もしている場合がほとんど。他大学の人もそうだと思いますが、ただサイトに登録して、『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』方式で知っている企業に片っ端からエントリーを送ってしまうのが、一番ダメなパターンですね」(同)
実際、希望の企業に内定した東大生の平均エントリー企業数は、「せいぜい5~10社程度」。それだけ、企業研究や自己適性の分析ができている証拠だ。なかには、知名度はさほどではなくとも、独自技術を持って将来性のある企業を、自分の足で見つけてくる猛者までいる。
「反対に、内定が一個もとれない東大生に限って、ぱっと名刺を渡した相手が、『ここにお勤めなんですか!』と顔色が変わるような有名企業に勤めたい、なんて真顔で言ったりするんです」(同)
あまりに残念な言動に目を覆いたくなるが、やはり、気になるのが、内定ゼロ・東大生の行く末。実際に、今年内定ゼロのまま卒業を迎えた東大生に、話を聞いてみた。
「一番多いのが”就留”。いわゆる就職留年というやつ。最近は既卒を採用してくれる会社もありますが、その場合、一度就職したがすぐに辞めて転職活動中の”第二新卒”と、競うことになる。少しでも社会人経験のある彼らと、同じ土台で競争するのは不利と判断して、留年する人が多いですね。次に多いのが”院逃げ”。最初から大学院を志すのではなく、内定がとれないから大学院に行く人のことです。そのほかには、妥協して高学歴好きが多いベンチャーに行くか、思い切り方向転換して、医学部に入り直すパターンも見受けられます」
ブランド志向のネット依存、さらには自己肥大ともいえる自意識過剰……。「東大生なのに内定ゼロ」の失敗談からは、就活の極意を反面教師的に学ぶことができる。
(文=佐藤留美)