日本を代表する総合電機メーカーである東芝などが経営危機に苦しみ、流通のカリスマと呼ばれたセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文元会長が電撃的に辞任に追いやられるなど、企業経営をめぐる環境は日々めまぐるしく変化している。そんな時代ゆえに、一般のビジネスパーソンも長いビジネス生活をくぐり抜けていくためには、最低限の企業戦略に関する知識を身につけておくべきであることはいうまでもない。
そこで今回は、戦略系コンサルティングファームや投資ファンドをはじめ数多くの企業で企業再生の実務に携わり、現役東大生を対象に9年連続で行った経営戦略に関する講義をまとめた書籍『東大生が実際に学んでいる戦略思考の授業:経営学は、生き残るための教養だ!』を6月に上梓した出口知史氏に会社の変革方法、ビジネスパーソンのサバイバル術などについて話を聞いた。
PDCAを速く回す
出口知史氏(以下、出口) 一般的な取り組みで行われるような、市場環境をリサーチしたり、各事業や部門の収益性を精査して問題点を抽出したりすることなどはもちろん一通り行います。ただおそらく私の場合、経営コンサルティング会社が行うような分析に比べて、こうした作業はそこまで時間をかけて突き詰めて行ったりしません。そうした会社が数字の間の辻褄まで見ながら1000万円単位で精査するとするならば、私は億円単位や10億円単位など、1、2桁ぐらい大雑把ではないでしょうか。
業績が悪化している企業でありがちなのは、まず利益をどこでどう取るかという狙いや思想が存在しなかったり、各自でバラバラだったりすることです。それに対して拙著『東大生が実際に学んでいる戦略思考の授業』でも紹介しているようなオーソドックスな戦略のパターンと比べるとどこにどうギャップがあって、どう軌道修正していくべきかを考えます。