本来、就業規則に書かれてある副業禁止規定は競業禁止規定であるべきかと思います。終身雇用を保証しにくい時代になったのですから、競業でない限りは、雇用リスク対策としても副業を認める動きが広まっていってもいいと思います。副業を認めないなら終身雇用で社員の生活を保証することが条件でしょう。それが会社と社員のフェアな関係かと思います。もちろん副業に一所懸命になって本業がおろそかになってはいけませんので、個人としても責任感や自主性を相応に高めなければいけませんが。
転職の心得
――中堅ビジネスパーソンへの助言もお願いします。ご著書でも指摘されていますが、多くの企業では40代に入ると先が見えてしまい、くすぶってしまう人が多いですね。子会社への移籍で給与がダウンするケースもごく普通です。
出口 なにがしかの事情で給与が下がったり不本意な仕事を担当したりするようになってしまっても、クビになったわけではありませんし、給料をいただけているというメリットをいったんは再認識するよう意識して、数日くらいそれ以上は考えずに冷静になるべきでしょう。そして改めて、給料は出ているのだからそれでよいと思えるのか、あるいはもう一度燃えたいのか、本音に正直になってみることかと思います。それは今後の人生をどう考えるかという問題です。
それでよいと思えたなら、現在の延長を過ごすほうが幸せだと思います。逆に、もう一度燃えたいと思うのなら、いまの安定した給料や環境を失うリスクを覚悟して転職を考えるべきかと思います。その覚悟がないと、周りの人たちも情報を提供してくれたり相談にのったりなどなどの協力をしてくれないでしょう。
――出口さんは東京大学で講義をされていますが、就職や転職についてはどのようなことを教えているのでしょうか。
出口 東大の学生はごく当たり前に一流企業に就職することが多いです。ところが就職した一流企業でも、個人の力はほとんど及ばない理不尽な要因によって会社が傾いたり、自分の立場が追いやられたりするリスクがあることを認識しておくべきだと思っています。そうした事態を迎えたときに初めて自分の将来を考えるようなことは避けておいた方が良いということがまず1点です。もう1点は、ある程度の年月存続している会社であれば、悪いところがあっても必ず良いところもあるので、良いところを改めて見つめ直すことです。そのうえで、良し悪しのバランスが自分の価値観と照らし合わせて相性が良いのか悪いのかを、本音と向き合って冷静に考えるたほうが良いということです。結局は自分の本音の価値観に正直になって働く場を選ぶ重要性を話しています。