加えて、社員の仕事の仕方や物事の判断方法や基準に問題があることが多いです。当たり前のことができていない、あるいは当たり前のことをなにがしかの理由でやろうとしていないのです。そこで各部門の社員の話を聞きながら、現在の利益の出し方や仕事の進め方を把握し、あるべき「っぽい」攻め方ややり方に改善し、実践していけるように細かい課題から取り組んでいきます。その「っぽい」が本当に正しいかどうかは、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善の繰り返し)を回しながら検証していきます。
――PDCAを回すことは、やはり経営の基本なのでしょうか。
出口 基本です。ただしもっとも重視するのは、速く回すことと、結果については一次情報から確認することです。そうすれば改善方法が間違っていた時に、速やかに軌道修正ができます。分析は1、2桁ぐらい大雑把と申し上げましたが、それは早期にPDCAに着手するためです。加えて、このPDCAを回している時は逆に、1、2桁細かく見ていると思います。たとえば利益に1億円の影響がある課題を解決しようとした時に、目の前にあった関連する具体的な課題が100万円のインパクトの話だった場合、普通は「改善策の検証は、効率を考えて次にもっと大きい話が出てきた時にやりましょう」と判断するのかもしれません。私の場合は「それでいいから早くやってみましょう」として着手し、その改善策の効果について1000円単位の動きから拾いあげて判断材料にし、本当に実効的かどうかを考えていきます。
ここで結果については数字だけでなく、一次情報を自分自身で確認しに行くことを大切にしています。たとえば、本社にいる営業本部の管理職の報告を聞くだけではなく、顧客と直接対話している営業マンや、あるいは顧客に直接聞くことです。話の大きさの大小の違いがあっても、背後で動いているメカニズムには共通することとそうでないことが混ざっているので、前者が何かを考えることでPDCAを進めます。
――当たり前のことができていなかったり、やろうとしていないのは、どこに原因があるのですか。ご著書には「ルールに縛られた結果の組織的思考停止」が挙げられていますが。
出口 昔の社内権力者が決めた方法がそのまま定着しているとか、今の方法でずっとやってきたのでほかの方法を考えたこともないとか、そんな背景があって、そこからはみ出すことに躊躇してしまいます。「今までの方法からはみ出すと誰かに怒られるのではないか」と萎縮していたりもします。真面目な会社員としてはごく普通のことですので、それに対して苛立ったりするわけではありません。逆に、改善の余地があったと思って良かったと捉えます。