仕事で「ここ一番」という場面なのに実力が出ない。なぜかミスをしてしまう。集中力が足りないのか、やる気の問題なのか…。その一方で、デキるビジネスパーソンは「ここ一番」というときにしっかりと結果を出している。彼ら、彼女はいったいどのようにメンタルを保っているのだろうか。
■パフォーマンスを上げたいなら「脳と身体の関係」に注目せよ
東京大学医学部出身で心臓病の専門医として東大附属病院に勤務した後、現在は医師のほかに経営再建、人材育成などの分野でも活躍している森田敏宏さんは『やるべきことがみるみる片づく東大ドクター流やる気と集中力を引き出す技術』(クロスメディア・パブリッシング刊)で、「やる気」や「集中力」を高め、パフォーマンスを安定させたいなら、「脳と身体の関係」に目を向けるべきだと言う。
これは一体どういうことなのか?
私たちは時に、集中力を長く保たなくてはいけない場面がある。集中をすればするほど、仕事は早く片付く。でも、その集中力が続かないからダラダラと仕事をしてしまうのだ。
そこで森田さんは本書の中で「運動」「食事」「休み」という3つのポイントをあげる。この3つを意識することが、長時間の集中につながるわけだ。
■筋肉を鍛えるほど脳は活性化する
森田さんは筋肉を鍛えれば鍛えるほど、BDNF(脳神経由来栄養因子)という、脳神経細胞の成長を促すホルモンが分泌されるという。つまり運動は脳の活性化につながるということだ。
森田さんと同じ東京大学出身であり、現在IT企業の中枢を担うポジションで辣腕をふるいつつも、サブスリーランナーとしてマラソン大会にも出場するYさんは、「走り始めてから、感情に惑わされなくなりました。冷静になったというか、走っていると頭が整理される感じです。走っていない時でも集中力が高まりました」と証言する。
本書には、ジョギング(時速9キロ)をしていると、脳もフル回転しているという調査結果が明らかにされている。運動が脳にも良い影響を与えているのだ。
■「小腹が空いたらすぐにチョコレート」は逆効果?
続いては食事だ。森田さんが集中力を保つためのポイントとしてあげているのが「血糖値」である。私たちの思考、すなわち脳の運動のエネルギー源はブドウ糖だ。糖分が不足すれば十分に集中力を発揮することはできなくなる。
しかし、頭を働かせるためにどんどん糖質を摂ればいいというわけではない。血糖値が乱高下してしまうと、脳に安定してエネルギーを供給できなくなり、パフォーマンスは著しく低下してしまう。そのため、血糖値が上がりにくいGI値の低い食品(肉類や卵、乳製品、野菜類)を食べてから糖分を摂取すると、血糖値の乱高下を抑えることができる。
■集中力を持続させるには「20分の仮眠」が有効
3つ目は「休み」だ。森田さんは特に「仮眠をとること」の重要性について書いている。作業してどうしても眠くなったときは、思いきって仮眠を取る。そちらのほうが結果的に集中力は持続するという。また、その時間は20分以内が良いとのこと。それ以上になると眠りが深くなってしまうため、目覚めたあと集中力を回復させるのに時間がかかってしまうのだ。