“活況な業界、大きな企業であったとしても、一寸先は闇の時代になった”と言われて久しい。それでも、まだ「自分の会社は大丈夫」「自分が現役のうちは大丈夫」と思っている人も多いだろう。
しかし、私たちは目の前の現実として、たくさんの大企業や老舗企業の凋落を見てきた。
三洋電機がパナソニックの完全子会社になったのは2009年のことだ。2011年3月には上場を廃止し、10万人いた社員のうち、パナソニックに残ったのはわずか9000人。9万人余りは外に放り出された形になった。そして2014年4月には国内における“SANYO”ブランドの商標は終了した。
この現実を「単なる時代の流れ」「経営者が良くなかった」などと言って他人事として流してしまってもいいのだろうか? その中で何が起きていたのか、そして、三洋電機を去っていった社員たち約9万人たちはそれぞれその後どのような人生を歩むことになったのか知ることは、不確定な未来を共有する現代に生きる私たちにとって、必要なことではないだろうか。
日本経済新聞社編集委員である大西康之氏は三洋電機という船が沈没していく様を、入念に取材し、2冊の本を書き上げた。一冊は2006年に出版された『三洋電機 井植敏の告白』(日経BP社/刊)で、本書では「会社は誰のものか」という問いを痛烈に突きつけている。そして、もう一冊は今年5月に発売された『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(日経BP社/刊)である。
『会社が消えた日』では2006年以降の三洋電機の凋落ぶりと、その中にいた人々の想いや考え、行動が描かれている。単純に三洋電機という会社の消滅だけをクローズアップするのではなく、元三洋電機の社員の人々が「会社が消える」という事態からどのようにして立ち上がったのかまで触れているということは本書を特徴づける点の一つだろう。
ハイアール、京セラといった企業に移った元社員たちは、それぞれの地で、環境の違いにもがきながらも、前に進もうとしている。また、公立高校の校長に転身した人や、新たに会社を立ち上げた人もいる。
本書の冒頭で、大西氏は次のように述べている。
彼らの「再生」は、かつての強さを取り戻す「復活」ではない。しかし、厳しい現実と折り合いをつけながら、彼らは「新しい人生」をつかみ取った。そのしなやかさ、したたかさこそが、これからの日本に求められる一番大切な資質だと思う。(p6より)
会社が消えたとしても、そこで人生が終わることはない。その先にも、道は続いていく。その道の先に、もしかしたら大きな成功が待っているかもしれない。
本書では、三洋電機のお家騒動がどのように進んでいったのか、そして、パナソニックの不振はなぜ起きているのかといった部分も垣間見ることができる。
誰でも「会社が消える」可能性がある中で、その会社で働いている。だからこそ、本書から学べることはたくさんあるはずだ。
(新刊JP編集部)
関連記事
・会社をクビになる前にやっておくべき5つのこと
・入社して早々“この会社と合わない…”と思ったら
・こんな会社は危険 ダメ社長4つの特徴
・父さんの会社が倒産した! そして家族は…?
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。