そんな塩野氏へのインタビューの模様を掲載した前回記事(http://biz-journal.jp/2012/07/post_417.html)に引き続き、今回はその後編として、「アップルが強い理由」「日本企業苦戦の理由」「ベンチャー、ITサービス成功の秘訣」などについてお届けする。
――ITサービス/ビジネスは、今後どのような方向に向かうのでしょうか?
塩野誠氏(以下、塩野) スマホとスマートデバイスの連携が進むと考えています。例えば、腕にリング状のデバイスを着けて、Bluetoothでスマホに飛ばす。そうすると自分の脈等のログを24時間ずっと取ることができます。このようなライフログ、医療系でのデータを手間暇かけないで取ることができて、そのデータに医療機関等がアクセスできれば、検査時間が短縮化され、かつ確実な医療が受けられるようになると思います。しかもデバイスがオシャレであれば、言うことなしですね。この「オシャレである」というのは、重要なファクターです。iPodの基本技術はどのメーカーでも持っていた一般的なものなのに、「iPodを持っているのがかっこいい」というマーケティングをして、アップルは大成功を収めたのですから、ハードのデザイン性は重要な要素なのです。ここに、実はベンチャー企業が成功するヒントがあるのです。
――日本企業も、もっとオシャレさを追求すべきということでしょうか?
塩野 これまでのITや電機業界は、あえて単純化した言い方をすると、「独裁者・ジョブズ的なもの」対「合議制・日本メーカー的なもの」の戦いなのです。ジョブズという思想家が独裁してつくった製品は、デザインも機能もエッジが立っています。一方、合議制でモノづくりをしてきた日本メーカーは、マーケティング部があり、営業販売部があり、デザイン部があり、技術部があり、合議制の中でエッジーなアイディアをネガティブチェックしていくうちに、普通なものにしてしまうということの繰り返しをしてきました。「先輩が言ったから」とか、「上司が言ったから」とかいってエッジを削ぎ落としていった結果、極めて普通の製品になってしまったんですね。
iPhoneは粗利益率70%
――日本のモノづくりが苦戦しているのは、デザインや設計思想ですか?
塩野 そうです。今はベーシックな機能は、どのメーカーでも同じコモディティになってしまいました。すると、製品やサービスの根底にある思想やデザインにかけるリソースの違いが、「消費者が感じる価値」に変換されるようになりました。iPhoneは、電子機器製品として見ると、粗利益率が70%くらい取れているんです。でも、世界中で売れている。これは、デザインや設計思想の部分が、商品価値として評価されているということなんです。そういう意味においては、日本の合議制というモノづくりでは、機能で劣らないのに非常に負けが濃いんですね。