――日本的企業経営が、時代にフィットしなくなってきたのでしょうか?
塩野 少なくともIT・インターネットを介したサービスや製品では、「合議制」で、「完全な製品」を、「いくつものバリエーション」で販売していこうとする日本企業のやり方は、時代にフィットしないようになりつつあると思います。アップルが成功したのは、ジョブズという独裁者が、「自分が欲しいと思う製品・サービスをつくったら、実はみんな欲しかった」というスーパーユーザーの発想です。製品数も少ないため粗利益率も高いわけです。でもこれは、ベンチャー企業そのものですよね。ベンチャーは思想家は経営トップひとりですから、「先輩に言われたから」とか、「社長の案件だから」とかはない。「そのサービスは、誰の何を解決しているサービスなのか」それをひたすら追求していけばいいわけです。
ベータ版でもリリースして、チューニングし続ける
――追求していく上で重要なポイントは?
塩野 現在のSNSでのサービスは、「Facebookログイン」「Twitterログイン」など、プラットフォームの上に乗っかったアプリとしてのサービスが中心です。しかし、プラットフォームに依拠してサービスを展開するというのは、DJみたいなものです。センスのある人間がミックスしているにすぎない。従って、そこのユーザーの属性の
・インタレストグラフ
・ソーシャルグラフ
のデータを借りてきて、サービスを洗練させていくということになる。しかし、プラットフォームという「誰かのつくった思想」に依拠してしまうので、限界があるし、誰でもできてしまうから、すぐにキャッチアップする競合相手が生まれてくるのです。そこで求められるのが、
「コンセプトをよりエッジーにするために、チューニングをし続けていくこと」
です。インターネットの世界においては、完成度60〜80%程度のベータ版でサービス開始した後に、適時チューニングし続けるということができてしまうので、「ユーザの反応を見ながら、いかに早くチューニングをしていくのか?」が重要です。でもこれは、日本人が得意な「おもてなしの心」なんですよ。「ユーザがこう言ってきたら、どんどん変えていこう」という、ユーザフレンドリーな「おもてなしの心」なのです。
グーグルのジレンマ
――海外の成功しているIT企業は、その「ベータ版」というポイントを意識してサービス提供を行っているのでしょうか?