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打ち合わせ、役割分担、そして本番…自殺系サイトの実態

連鎖するネット心中、なぜ“救う側”のキヨシが自殺に至ったのか?

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連鎖するネット心中、なぜ“救う側”のキヨシが自殺に至ったのか?の画像1「Thinkstock」より
 インターネットの「自殺系サイト」などを通じて、見ず知らずの人と出会い、一緒に自殺する。これを「ネット心中」や「ネット集団自殺」などと呼ぶ(この稿では、筆者が従来から使っていた「ネット心中」とする)。

 ネット心中が最も連鎖的に起ったのは2003年から04年のころだが、その後もたびたび起きている。そして9月10日、大阪府大東市の山道でも起きた。このときワゴンは全焼。遺体は17歳の女子高生だった。近くにいた男女2人が逮捕された。彼らが知り合ったのは自殺系サイトだった。

 ネット心中で典型的なものは、自殺系サイトの掲示板に、心中相手を募集することから始まる。自殺系サイトにはさまざまなタイプがある。相談を主体とするものや、独白を中心にするものもある。そこには色々な人がアクセスをしている。自殺志願者だけでなく、「かつては志願者だったが、話を聞く側」の人もいる。精神科医やカウンセラーなどの専門職の人たちも書き込んでいることさえある。

 また、媒介するサイトが自殺系サイトではなく、出会い系サイトの場合もある。私が取材したケースでも、20代の女性が出会い系サイトで知り合った50代の男性と自殺をしたということがあった。方法としては、練炭自殺が多いと思われるが、一酸化炭素中毒による自殺も一時期は増えた。まれに飛び降りや首つり、向精神薬や睡眠薬などの過量摂取といったこともあった。

●ネット心中の始まり

 初めて報道された「ネット心中」は2000年11月、福井県の歯科医(46)と愛知県の元OL(25)とのものだった。「自殺系掲示板」で交流をしていた中で、「2人で死ぬ方法」の話題になり、歯科医が睡眠薬を用意した。初めて顔を合わせたのはメール交換から約3週間後の10月20日ごろ。さらに数日後、歯科医宅で睡眠薬を飲んだ。結局、その睡眠薬の過量摂取が原因で死亡した。

 この事件は大きく報道されたが、連鎖は起きなかった。連鎖のきっかけとなったのは02年10月に起きた、東京都板橋区のマンションの一室での男女2人による自殺。「やはり1人で死ぬのは寂しい。相手は誰でもよかった」「インターネットの自殺掲示板で知り合った男性と死にます」などの遺書があった。書いたのは大阪市内の女性(32)。そばには練炭をたいた七輪があった。知り合って1カ月後の出来事だった。

 この時の新聞記事をもとに模倣したのが、03年2月11日、埼玉県入間市内の空きアパートの一室で男女3人が発見されたものだった。模倣したのはアパートという場所、練炭自殺という方法、知り合ったのも「自殺系サイト」だ。この頃、心中を希望する自殺志願者のネットユーザーはそれなりにいた。当時、私が確認する限り、2つの「心中掲示板」があった。今でも検索をすると、いくつかヒットする。そうした掲示板で心中相手を募集し、一度「打ち合わせ」のために顔合わせをし、役割分担を決めて、心中の当日を迎えるのだ。

 入間市の場合は、「埼玉県に住む者です。一酸化炭素中毒で逝こうと思っています。今冬季に自殺したい方を募集しています」と、ある男性が呼びかけた。しかし参加する予定だった女子高生(17)が「心中」当日には現れなかった。心配になったこの女子高生が現場に行くと、遺体を悪見。110番通報し、発覚した。この事件が、その後続く連鎖の元になった。

●ネット心中を止める人

 筆者は数々の「ネット心中」志願者に話を聞いている。その後、ネット心中を実行した人もいた。ただ、ネット心中を止める側に回る人もいた。その中でも、今でも記憶に残っているのはキヨシ(30代半ば)だ。

 キヨシは02年夏、妻がつくった借金を理由に離婚した。住宅ローンをサラ金から借りてしまい、返済が難しくなった。多重債務ともなり、1400万円以上にもなった。さらに妻は家事や育児もせず、01年秋、妻は突然家を出た。そのため、借金取りはキヨシのもとへ来る。そんなとき、埼玉県入間市のネット心中が頭に浮かんだ。

BusinessJournal編集部

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