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トヨタ、日産、ホンダ……トップメーカーに逆風

日本車が中国で大ピンチ!「誤った行為の結果を見せてやる」(業界幹部)

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post_922.jpg中国トヨタはアトムがマスコット。
(「丰田汽车(中国)HP」より)
 一時帰国中の丹羽宇一郎中国大使(元伊藤忠商事会長)は10月20日、母校の名古屋大で講演し、沖縄県・尖閣諸島をめぐる日中関係について「(国交正常化後の)40年間の何十人という首相の努力が水泡に帰すかもしれない。40年以上前に戻ってしまう」と警鐘を鳴らした。

 丹羽氏は今の日中関係悪化をこれまでと比べて「まったく次元が違う」と強調し、「北京には大変緊張した雰囲気がある。問題の深刻さを日本の政府、国民が感じていない」と指摘。中国の最高指導部が11月に交代しても、日中関係がすぐに好転することは難しいとの危機感を示した。

 日本の経済界に漂っていた楽観論に水を浴びせたかたちだ。日中関係はこれまで何度となく悪化したが、一時的に冷え込んだビジネスは、すぐに回復してきたからだ。自動車業界は過去の経験則に縛られていると大変なことになる。

 トヨタ自動車、日産自動車、ホンダはいずれもピンチだ。

 日本車メーカーの中で、中国で最大のシェアを誇る日産は11年に中国市場で125万台を販売。12年以降も右肩上がりの成長を見込み、15年には230万台を売る計画だった。9月の中国での新車販売台数は前年同月比35.3%減の7万6100台。

 トヨタも11年88万台から12年には100万台、15年までに最大180万台を販売する計画を立てている。9月は同48.9%減の4万4100台。トヨタは12年の世界生産で目標に掲げた1000万台の計画が、未達に終わる公算が大きくなった。

 というのも、11~12月の中国での生産を、最低でも前年実績の35%減にする方針だからだ。反日騒乱デモ後にトヨタが減産する台数は10~12月で10万台を超える。11年の11、12月の生産実績は各8万2000台。35%減だと5万3000台前後になる。今年の中国での年間販売目標を100万台としてきたが、達成は困難になった。

 ホンダは11年の6万18000台から15年には倍増の120万台を狙っていたが、9月は同40.5%減の3万3931台だった。

 強気の目標を掲げた各社は、中国での生産&販売体制の拡充に邁進中だった。日産は高級車「インフィニティ」の中国での現地生産を14年までに開始する予定だった。トヨタもHV車の一貫生産を、15年をメドに進めている。ホンダは13年からの3年間で10車種以上をフルモデルチェンジして中国市場に投入するなど、中国での開発力の強化を打ち出している。

 日産の今年の販売目標は135万台(前年比8.2%増)だったが1~9月のそれは95万台。達成率は70%。低迷が長引いており昨年の年間実績(125万台)を下回りそうな雲行きだ。

 日産、トヨタ、ホンダの9月末時点の年間販売計画の達成率は62.7%~70%。日産が最もいい数字だが、それでも70%である。今年、75万台の目標を掲げるホンダの1~9月の実績は47万台、達成率は62.7%だ。

 中国自動車工業協会の幹部は、日系自動車メーカーについて「生産や販売が大幅に減少したのは当然のことだ」と強い調子で批難した。同協会のホームページで「日本人は政治が経済に影響することはないと思っているようだが、私たちは民族の大義を永遠に無視しない」と述べ、「日本に誤った行為の結果を味あわせるべきだ」と主張した。

 中国全体の9月の新車販売台数は、前年同月比1.8%減の161万7400台だった。販売台数がマイナスになるのは今年1月以来8カ月ぶり。中国車は同7.5%増、ドイツ車は13.8%増、米国車は15.1%増、韓国車は9.4%増。日本車は一人負けで40.8%減。日本車のシェアは12%前後で、前月から6ポイント低下した。12年の中国での日本車の販売シェアは25%を計画していたが、これは無理。5ポイントは下がるだろう。最悪で8%減か。

 ここまで深く足を突っ込んでしまったら、各社とも反日騒乱デモのようなアクシデントがあろうとも、おいそれとは方針を転換できない。国際協力銀行(JBIC)の奥田碩・総裁(元経団連会長)は「中国の指導部が交代する11月の共産党大会までは、日本の企業の生産・販売は慎重に見なければならず、低い操業になる」との見通しを明らかにした。さらに「日本製品の中国での生産や販売は(悪化以前の)半分以下になっているのが現実だろう」と指摘した。奥田総裁は生産や販売の回復には、なお時間を要するとの厳しい見方を示した。

 自動車業界の首脳の本音は、「デモの影響は楽観的に見て3カ月。悲観的に見れば半年以上続く」だ。

 中国政府の中長期の自動車戦略をもっと注視すべきだ。中国が世界最大の自動車市場となったことに目がくらみ、日本と同じ最新鋭設備を持ち込んだメーカーもある。今後、中国政府は日系合弁企業の最新の生産設備や技術を徐々に奪っていくだろう。

 日本車は売れないが、同じ工場で生産する現地開発車は、中国ブランドなので売れる。現地開発車と言ってはいるが、日本の技術支援を得て作った車だから性能は優秀だ。消費者(中国人)はこの事実を知らずに中国車として買い、合弁工場の稼働率は維持される。

 これが繰り返されると、合弁工場で作られる日本車は減り、中身は日本の技術で作られた中国ブランドの車ばかりになる。次は合弁工場の日本側の出資比率を下げる。強制的にやるかもしれない。技術は盗まれ、日本の自動車メーカーはお役御免となる。

 日本の自動車メーカーは中国のビジネスが無くなることを前提に、新たな世界戦略を立てるべきだ。日産は300億円を投下してタイに年産20万台規模の完成車工場を14年に新設する。トヨタはインドネシアでの生産能力を現在の約2倍の年25万台に増強する。ホンダもインドネシアの生産能力を現在の3倍の20万台体制にする。トヨタ、ホンダとも14年の稼働を目標にしている。

 日本メーカーの東南アジアの生産能力は16年までに370万台以上になる。現在、米国が350万台、中国が400万台だが、中国は間違いなく減る。東南アジアのそれが米国、中国に肩を並べることになる。

 こうした世界戦略を実行することが中国に対する強い抑止力になることを肝に銘じておく必要がある。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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