(「Thinkstock」より)
2010年の沖縄県・尖閣諸島を巡る日中対立で、中国当局がレアアースの対日輸出を止めたことから、日本企業が代替品の開発を進め、需要が急減した。中国のレアアースの生産量はピーク時の16万トンから、今年は半減する見込みだ。
中国は、レアアースの輸出を対日交渉のカードとして切ったわけだが、逆に中国企業が損失を被る格好になった。
中国のレアアース企業は300社にのぼるが、4分の1が生産を中止し、操業中の会社でも稼働率は30%程度だという。価格もピーク時の3割にまで急落した。7割安くなったということである。
レアアースの失敗は、どちらが相手を、より必要としているかを考えなかった中国当局の頭でっかちぶりを浮き彫りにした。
今回、中国は再びレアアースを全量、対日禁輸するつもりだったのだろうが、その前に自国の企業が経営不振に陥ってしまった。レアアースに対する日本側の具体的な取り組みを報告する。
双日は今年から豪州産のレアアースを当初、年3000~4000トン規模で輸入を始めた。3000~4000トンだと国内需要の1~2割になる。長期契約で13年には国内需要の33%相当の9000トンを確保する。
12年4月30日にデリーを訪れた枝野幸男・経済産業相は、インド政府とレアアースの協力協定を結んだ。インド原子力庁の子会社インディアンレアアースと豊田通商が協力し、レアアース工場をインド東部のオリッサ州で6月中に完成させ、日本の年間消費量(2万7000トン)の15%弱にあたる4000トンを毎年、日本に輸出することになる。インドのレアアースの埋蔵量は世界第5位(310万トン)である。
豊田通商、双日、ベトナムの地元企業のレアアースの開発協力も佳境に入ってきた。現在建設中の工場は来年2月に稼動し、年間1000トンの生産が見込まれている。また、双日はオーストラリアの鉱山会社、ライナスとも協力して、2013年から日本に年間9000トンのレアアースを輸出する計画だ。
世界一のレアアース輸入国である日本は、年間2万7000トン(ピーク時は3万トン)のレアアースを消費、うち80%を中国に頼ってきた。
10年に中国はレアアースの輸出規制を始めたが、情報筋によれば、現在、国際市場で闇取引されているレアアースは年間2万~3万トンに達している。これが日本の供給源の多様化戦略に余裕を与えている。値段は高くなるが、数量は確保できるメドが立っているからだ。