三菱重工業と日立製作所が11月29日、火力発電所を中心とした発電事業を統合することで合意し、正式に発表した。今後、2014年1月には新会社を設立。三菱重工が65%出資し、連結子会社に組み入れる。日立の出資比率は35%だ。
三菱重工の大宮英明社長は「良い組み合わせがあれば、今後も協業を進める」と表明。原子力発電や都市高速交通システムなどの事業統合を視野に入れ、日立との連携を進める考えを示した。
もともとは、三菱重工と日立が経営統合するという超弩級のプランが、11年8月4日に記者会見して発表されることになっていた。世界最大規模の社会インフラ企業が誕生するはずだった。
だが、日本経済新聞の11年8月4日付朝刊1面トップの「日立・三菱重工統合へ」のスクープで共同記者会見はパーになった。
4日朝、日立製作所の中西宏明社長が東京郊外の自宅から姿を見せると、新聞各社の経済部記者やテレビ局のクルーが待ち構えていた。日経が報じた新聞協会賞ものの特報について、その真偽のほどを尋ねられた中西社長は「夕方に(統合を)発表する」と明言した。記者会見がセットされていることを示唆したのである。
テレビ各社は「日立・三菱重工統合」のニュースを速報で流した。ここから大混乱が始まった。合併や統合については正式発表までトップはコメントをしないのが常識だ。ところが、中西社長はテレビカメラの前で「はい」と統合を認めた。しかも、事業統合ではなく、日経が書いた通りで、規模が大きい日立が三菱重工を呑み込むかたちでの経営統合と認識されてしまった。事業統合と経営統合では、まるっきり意味合いが違う。
日立に経営統合されると報じられた三菱重工はカンカン。「統合について合意する予定はない」ときっぱり否定したうえで、報道に対して「極めて遺憾。断固抗議する」と強いコメントを出した。かくして、統合の発表は幻に終わった。
だから、今回は水入り後の仕切り直しなのである。あれから1年4カ月、両社は電力事業の統合にやっと辿り着いた。さすがに中西社長がテレビカメラの前で口を滑らせることもなかった。
●国内から海外へ。両社の思惑は?
電力事業を統合する両社には、それぞれお家の事情がある。
三菱重工は常に“3兆円の壁”に悩まされていた。連結売上高は30年以上、3兆円前後にまとまっている。国家の発言と一体となって歩んできた同社は、三菱財閥の中核に位置するが、いまや往年の面影はない。
03年に社長に就任した大宮社長は低成長体質からの脱却をめざして、事業構造の抜本的な改革に乗り出した。名門復活にかける大宮社長がグループ改革の目玉に据えたのが、営業利益の約8割を占めるガスタービンを主力とする原動機部門の再編だった。