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ステマの生みの親はウォルマート?

ペニオク騒動、なぜ芸能人への制裁は異様に軽い?欧米なら処罰も

文=田中秀憲/NYCOARA,Inc.代表

ペニオク騒動、なぜ芸能人への制裁は異様に軽い?欧米なら処罰もの画像1ペニオク騒動で話題となった
ほしのあき著『My Happy Story』(ワニブックス)
 年末に芸能ニュースを賑わせた、熊田曜子やほしのあきなどの有名タレントらによる「ペニオクステマ問題」。自身のブログに虚偽のペニオク体験を書き込み、ファンらをだましていたことで多くのタレントが追及を受け、謝罪に至ったのは記憶に新しい。

 しかし、このような手法は以前より世界各国で大きな問題となっており、関係した企業やブログ執筆者は厳しい社会的制裁を受けることもやむなしとされる傾向に比べ、タレントが謝罪する程度で事を終わらせようとする日本は、海外から異質に見られている。特に、今回のように企業側に法の手が及ぶような事態であるなら、当然それに加担した関係者は、おしなべて同様に立件~処罰の対象になってしかるべきだ。

 では、なぜ欧米で、このような手法が厳しく追及されるようになったのか? その契機となったのは、ある大企業のステマ事件だった。

ステマの元祖はウォルマート

 2006年、やり玉に挙がったのは、世界最大の小売企業・ウォルマートである。同社は1945年に1人の男によって創業後、50年もたたないうちに世界で最大の小売企業へと成長。97年には売上も1000億ドル(10兆円以上)を記録。99年には従業員数が世界最大の企業となった。日本の西友を傘下に持つことでも知られている。

 このように押しも押されもせぬ大企業となった同社だが、特に社員の待遇への不満は根強く、21世紀に入ってからは、ネットの普及もあり、悪評が売上にも影響するようになってきていた。

 そこで同社が取った手段が、「ステマ」だったのである。

 05年頃から、同社は広告会社からの提案のもと、あるブログをスタートさせた。このブログは「カメラマン夫婦がキャンピングカーで大陸を横断する過程で、各地のウォルマートで出会った従業員たちの素晴らしさを伝えていく」という内容。

 ところが、これが大嘘であることが、ビジネス雑誌にすっぱ抜かれてしまったのである。カメラマンは年齢も名前もでたらめ。妻と称する人物は、まったくの他人であり、宣伝を受託した会社の従業員の家族であることが判明。ブログに書かれた内容は、すべてウォルマートにとって、評価が上がるように仕込まれたものばかり。さらには、彼らに旅行資金を供出していたのがウォルマートの関係団体であることも判明した。

 米国ではこのような嘘のブログを「フログ」と呼ぶ。Fake(偽物)のBlog(ブログ)をつなげた造語だ。ウォルマートと広告会社による企業ぐるみのフログは大きな注目を受けることとなり、多くのメディアがこの事件を取り上げるようになった。

 問題はさらに続く。この事実が指摘された後も、広告会社が事実を認めるまでに数日を要したことや、この会社が不正なマーケティングに対する倫理規定を定める協会の一員であったことなども災いし、ウォルマートともども大きな非難にさらされたのである。

 このような事例は米国では少なくなく、ドクターペッパー、マクドナルド、サウスウエスト航空、ソニーなども過去に問題点が指摘されたことがある。もともと広告宣伝の手法や内容には厳しい欧米社会ではあるが、このような事例の後、インターネットを介する広告宣伝や口コミなどによる購買意欲の喚起についても、より厳しい倫理規定と道徳心、詳細な規定が制定されることとなった。

追及に消極的な日本のマスメディア

 ウォルマートのケースでは、問題が露見するきっかけになったのはビジネス誌のスクープによるものだが、日本では有名タレントが多く関係していたからなのか、大手マスコミの積極的な追及は少なく、ネット上のメディアや書き込みなどによるものが中心となっている。メディアの報道姿勢は非常に理不尽かつ不公平であり、タレント自身や所属事務所の曖昧な対応も疑問点が多い。

 大手メディアが、ツイッターや2ちゃんねるで騒がれて、ようやく渋々腰を上げるような状況では、一般市民がステマの被害に遭う機会はますます増えていくことだろう。
(文=田中 秀憲/NYCOARA,Inc.代表)

田中秀憲/NYCOARA,Inc.代表

田中秀憲/NYCOARA,Inc.代表

福岡県出身。日本国内で広告代理店勤務の後、99年に渡米独立。04年、リサーチ/マーケティング会社、NYCOARA, Inc.を設立。官庁/行政/調査機関/広告代理店などのクライアントを多く持ち、各種調査や資料分析などを中心に、企画立案まで幅広い業務をこなす傍ら、各メディアにて寄稿記事を連載中。小泉内閣時代には、インターネット上での詐欺行為に関するレポートを政府機関に提出後、内閣審議会用資料として採用され、竹中経済産業大臣発表資料の一部となった。

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