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超便利なWikipediaの秘密…誤情報や捏造も横行で信憑性は?無料でどうやって運営?

文=昌谷大介/A4studio
超便利なWikipediaの秘密…誤情報や捏造も横行で信憑性は?無料でどうやって運営?の画像1Wikipedia」より

 インターネット上で調べものをする際、無料で利用できるオンライン百科事典「ウィキペディア」(以下、ウィキ)を使うという方も多いだろう。

 しかし、そんな便利な百科事典はどのような仕組みで成り立っており、どのように運営されているのだろうか。今回はそんなウィキについての疑問を解消していきたい。

 そもそもウィキは、ウィキメディア財団が運営しているサイト。2001年1月、ラリー・サンガーとジミー・ウェールズによりプロジェクトが開始されて以来、広告を一切掲載せず、個人や団体などからの寄付により運営している。

 16年2月11日現在、使用言語は291言語、全世界の総記事数は3864万5599記事、日本語版の総記事数は101万4463記事となっており、その膨大な情報量は類似のオンライン百科事典を凌駕している。

 全世界に5億人以上のユーザーがいるといわれているが、誰もが無料で自由に閲覧できるだけでなく、編集行為にも本名を明かすことなく自由に参加できるのが最大の特徴。つまり「集合知」から成り立つ事典であるがゆえに、記された情報の正確性を保証しているものではない、というのが前提となっている。

 実際、筆者が試しにある記事の編集を行ったところ、初めての編集作業ではあったが、ものの数分で情報を追記することができた。この簡単さ、自由さがウィキのメリットであり、同時に情報の信憑性を揺るがすデメリットにもなり得るということだろう。

呼び掛けをするごとに十数億円の寄付

 そして前述したように、運営は寄付により成り立っている。

 ウィキのヘビーユーザーであれば、「今週は皆様にお知らせがあります。ウィキぺディアの援助をお願いいたします。 私たちは独立性を守るため、一切の広告を掲載致しません。平均で約1,500円の寄付をいただき、運営しております。援助をして下さる読者はほんの少数です。今日、読者の皆様が700円ご援助下されば、寄付の募集は一時間で終了することができます。(以下略)」といったような寄付を募る文面を定期的に目にしていることだろう。

 実際の寄付者は利用者のうちのほんの一部だというが、たとえば11年1月1日には、50日間で140カ国から約50万件の寄付が集まり、目標としていた1600万ドルの資金調達に成功したことを発表している。こうして集めた寄付金はインフラ経費、人件費、プログラムサポートなどに充てられるという。

架空の戦争を5年間も真実かのように記載

 さて、ここで改めてウィキの記事に記載されている情報の信憑性について解説したい。

 前述の通り、情報の正確性を保証しているものではなく、ウィキ内でウィキ自体を紹介する記事にも、「基本的に専門家による査読がなく、不特定多数の利用者が投稿するというシステムゆえに、情報の信頼性・信憑性や公正性などは一切保証されておらず、ウィキペディアの方針に沿わない利用者の編集により問題が起こることもあり、いくつかの問題や課題も指摘されている」と記述されている。

 誰でも簡単に編集できるということは、知識の乏しい人物による稚拙な内容の投稿や編集も可能ということである。また、悪意を持って内容を改竄したり捏造したりする荒らし行為を行う者も少なくない。

 記述の信憑性を高めるべく、ウィキには情報ソースを記載するという制度が採用されているし、運営側は荒らし行為を行う者を野放しにしないよう“荒らし駆逐ボット”で投稿や編集記述を監視して、荒らし行為と認定したものは自動的に修復するなどの対策も講じているが、それでもフォローしきれるわけではないだろう。 有名なところでは、英語版ウィキに約5年もの間、実際には存在しなかった戦争に関する記述が、現実に起こった戦争かのごとく掲載され続けていた事例がある。「17世紀にインドで起きた戦争」という体裁で記事化されていた「Bicholim conflict」(ビコリム戦争)は、戦争が起こった推移や背景、該当地域の情勢などが詳細に記述されており、現地の写真もさも本物かのように掲載されていたのだ。そのため、要するに単なるイタズラで執筆された架空の戦争であったにもかかわらず、実在しないことが指摘されて削除されるまで5年も掲載され続けたという。

誹謗中傷、犯罪予告、ステマまで

 一方、ウィキが犯罪予告や誹謗中傷の場となることも珍しくない。08年には、北京オリンピック聖火リレー当日に長野駅への爆破予告が書き込まれる、天皇誕生日一般参賀にて皇居を破壊して天皇・皇后や入場者を殺害すると書き込まれるといった犯罪予告がされ、実際に逮捕者も出ているのだ。

 同じく08年、アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』で主人公・涼宮ハルヒを演じた人気声優・平野綾さんのウィキ記事に「死ね」と6万7000回以上も記述され、画面いっぱい「死ね」という文字で埋め尽くされるという異常なまでの荒らし行為も発生している。

 また、ステルスマーケティング(ステマ)の問題も浮上している。

 自社の利益になる情報をウィキに記載したい企業などがステマ業者に依頼をし、偏った情報を記述するといった行為も横行しているのだ。こういったステマ行為は中立性や正確性を貶めるとみなされ、利用規約に反する行為として禁止されており、ステマ行為が発覚したユーザーアカウントを利用停止・禁止に処するなどの措置を行っている。しかし、当然このような処置でステマが根絶できているわけではない。

 こういった荒らしやステマといった悪意を持って編集をする者以外にも、単純に自身の主義主張を押し通したいユーザー同士の“編集合戦”が日々行われている。あるユーザーが書いた内容に対して納得のいかない別のユーザーが、その記述を削除して別の内容に修正する、その内容をもう一方のユーザーが再び削除・修正するといった編集合戦がエンドレスに繰り返されている記事も多い。

 特に政治、宗教といったジャンルの用語では編集合戦が活発に行われており、そういった記事に関しても他の一般ユーザーからすれば、その時点で掲載されている情報に信頼を置くことはできないだろう。

 無料ですぐに知りたい用語の情報を引き出すことができるウィキは確かに便利であり、そこに記述されてる内容におおむね間違いはないのだろう。しかし、編集者の事実誤認による記述間違いや編集合戦はもちろん、悪意のある荒らしやステマによるミスリードもあるということである。

 一般ユーザーはウィキから便利に情報を得ることができるが、そこに記載されている情報を鵜呑みにするのではなく、その情報をどこまで信じるか否かの精査は各自でしなければいけないようだ。
(文=昌谷大介/A4studio)

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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