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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第17回

バイアグラを部下に買わせ、愛人の指南で合併を決める大手新聞社長の性癖

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「Thinkstock」より
【前回までのあらすじ】
ーー巨大新聞社・大都新聞社社長の松野弥介は、常宿にしている水天宮のホテルのスイートルームで、10年来の愛人である社長室の花井香也子との逢瀬を楽しんでいた。2人の会話はいつしか、2人が不倫を始めるきっかけとなった、10年前のパリ出張の話になった。この出張は、大都創立130年の記念事業である「大ルーブル展」の調印式に当時社長で現相談役の“狆爺さん”こと烏山凱忠が出席するため、当時常務だった松野と、社長室勤務の香也子がそれに同行したものだった。そして出張最後の夜、酔った香也子は松野を部屋に誘ったのだったーー。

 香也子の独り笑みを見て、松野はまた抱き寄せた。すると、香也子が耳元で囁いた。

 「パパが部屋に来た後のことは覚えているの。私、“狆爺さん”たちにむしゃくしゃしていたし、暗い顔つきだったパパを慰めてあげようという気持ちもあったわ。でも、私がパパを呼んだっていう記憶はないの。信じて……」
 「わかっているよ」

 寄り添った香也子の顎に手をあて、松野は口づけした。

 「そろそろベッドルームに行こうよ」

 松野は香也子のセーターをたくし上げようとした。

 「待って」

 香也子は自分でカシミヤのセーターを脱いだ。

 「パパは10年前と同じようにしてほしいの?」
 「そんなことは思っていないけど、君を見たいだけだよ」
 「ここ1〜2年はいつも見て、触るだけじゃない? 今日は違うの?」
 「今日は違う」
 「10年前と同じ?」

 10年前、松野は60歳、その日、愛人になった香也子は35歳だった。今、45歳になった香也子は“女盛り”だった。

 「ちゃんとするよ」
 「あまり信用できないけど、わかったわ。シャワー浴びてくる。パパはどうするの?」
 「僕はベッドで待っているよ」
 「じゃあ、バスローブを持ってきてあげるわ」

 香也子は立ち上がると、ベッドルームを通り抜けて、バスルームに向かった。そして、バスローブを持って戻ってきた。リビングのソファーに身を埋めていた松野に渡した。

 「これに着替えて待っていて。パパはシャワー浴びるの?」
 「いや、いいや。シャワーはいい」
 「10年前もそうだったわね」

 香也子は意味深な笑みを浮かべ、ブラウスのボタンを外しながらバスルームに戻った。

 松野は、受け取ったバスローブを脇に置き、テーブルの手を伸ばし、サンドイッチを摘んだ。「美松」でよせ鍋は食べたが、食事は取らずに先に出たので、小腹が空いてきたのだ。2つほど摘むと、少し気の抜けた、グラスに残ったドンぺリを飲み干した。

 「よし」

 松野は自分を元気づけるように立ち上がった。バスローブを持ってリビングの中央の寝椅子まで行き、ワイシャツと背広のズボン、靴下を脱いだ。下着の上からバスローブを着ると、ベッドルームの窓側のベッドに腰を下ろした。

 「もう11時少し前か」

 腕時計を外し、ツインベッドの間にあるスタンド台に置き、リビング側の壁にある液晶テレビをつけた。民放のニュースが始まるところで、ぼんやり見つめていると、バスローブ姿の香也子が出てきた。