伝える「岩手日報」(2012年12月22日付)
この記事にまつわる注目すべき大手メディアの報道と、その後のあきれ返るような政府の発表が続いているので、当サイトで早速ご報告しておきたい。
その前に「サイゾー」の記事を簡単に説明しておくと、被災地以外の自治体の中に、がれきを受け入れると手を挙げたものの、結局は受け入れを見送った自治体が一説には10以上に上り、それらの団体が総額で数百億円受け取るという信じられない復興予算の巨額流用疑惑を報じた。
記事中、代表例として取り上げた自治体が、神奈川県。こんな新聞記者の解説を紹介している。
「神奈川県の黒岩祐治知事といえば、いち早く受け入れを表明し、積極派首長でつくる『みんなの力でがれき処理プロジェクト』の発起人でした。横浜、川崎、相模原の3政令市で焼却し、横須賀市の県営処分場で最終処分すると宣言したのですが、『事前の説明がない』と住民は知事のパフォーマンスに激怒。困った黒岩さんは細野豪志環境相(当時)に、がれき処理費を全額国で面倒みてくれたら地元住民は納得すると助け舟を求め、細野さんもOKを出しているんです。結局、神奈川県は根回しに失敗し、焼却処分の受け入れは断念してしまうのですが、処理費だけ神奈川県に出ているようです」
■がれき受け入れもせず「340億円」
実は、この記事が掲載された「サイゾー」2月号が発売されたわずか5日後、同記事の内容を裏づけるこんな報道が飛び出したのだ。報じたのは、共同通信。「がれき処理せず340億円」「環境省、14団体に復興予算」という見出しで、こう報じている。
東日本大震災で発生したがれきの広域処理をめぐり、環境省が受け入れ先から除外したにもかかわらず、北海道から大阪までの7道府県の市町や環境衛生組合など計14団体に、復興予算の廃棄物処理施設整備費として総額約340億円の交付を決定していたことが21日、共同通信の調べでわかったーー。
さらに環境省が「検討すれば、結果として受け入れなくても交付金の返還は生じない」と異例の通達を出していたことも判明。だが、交付が決定された対象には、条件だった「検討」をしていなかった神奈川県の4団体も含まれていたこともわかり、共同通信の指摘を受けた同省は不適切と認め、神奈川県分の計約160億円の決定を取り消す方針だ。
被災していない地域への流用が大きな問題となった復興予算のずさんさが、あらためて問われそうだが、環境省は「神奈川県分の交付は不適切だが、残る10団体は受け入れを検討したので問題ないと判断した」とし、一部はすでに予算交付を執行、今後も執行を続ける方針だ。
■環境省のずさんな対応が発端
政府は2012年3月、放射性物質への懸念から、がれきの広域処理が進まないため、てこ入れを検討。受け入れが見込める建設中の施設を対象に、交付金(事業費の3分の1〜2分の1)と特別交付税(残りの地元負担分)をセットにした支援策を打ち出した。環境省は候補施設を自ら選び出し、調整役の都道府県に受け入れを打診した。
この環境省の通達は3月15日に廃棄物対策課長から出され、同省は12都道府県計21団体の申し込みを受理した。
だが、各地で受け入れ対策に当たる環境省職員が不足。8月の見直しで被災地のがれき量が減った際、受け入れ準備が具体化していなかったこの計14団体を受け入れ先から外したが、予算の交付決定は覆さなかった。
政府と霞が関がグルになって、復興予算の流用を容認してしまうとは、とんでもない話ではないか。だが、これほど批判されても、一向に懲りないのがこの国の中枢部らしい。
環境省は今月25日になって、広域がれき処理の必要処理量が、これまでの見込みからさらに半分も下回る69万トンになったと発表したのだ。その理由といえば、被災地内に焼却施設が次々と建設されたおかげで、独自に処理できる量が増えたのだという。復興問題を追いかけてきた大手メディアの一線記者は、あきれ顔で語る。