あるマンション管理組合の関係者は、「阪神大震災と比較すると、被害の規模は小さいものの、数は圧倒的に多い」と語っている。加えて、震災から数カ月の間、約600回に及ぶ余震があったことが阪神大震災との違いだろう。そのため被害がそれほど大きくなくても、住民の不安は計り知れないものになった。
地震でマンションが損壊した場合、マンションを解体するか、建て替えするか、補修するかの選択を迫られる。
まず、解体するケースであるが、これは極めて稀と言っていい。マンションの解体は民法で全員合意の賛同を得られなければならない。それぞれの家庭事情も異なる中で、所有者全員の同意を得るのはハードルが高い。
ところが、仙台市宮城野区にあるSマンションは、震災からわずか1カ月半で解体が決定した。1976年に竣工した地上14階建ての同マンションは、L字に並ぶ2棟をつなぎ合わせるエキスパンションジョイントが破損し、2棟のうち1つの棟が傾斜した。建て替えか、補修かそれとも解体か、資金面を含め検討をした結果、管理組合の臨時総会で解体が決定した。仙台市が解体、撤去費用を助成する制度を創設したことも解体を決めた要因になったようだ。このSマンションは、78年の宮城県沖地震の時も被害を受けていたが、その後耐震補強をしていたら、解体とはならなかったかもしれない。
ただ、もし建て替えを選択した場合でも、道のりは決して容易ではないし、建て替えたことで資産価値が上昇するかというと決してそうではない。例えば、阪神大震災では、物件の住民同士で解体か補修かをめぐり、最高裁まで争われたケースもあった。
一方で、仙台では補修工事も思いの外進んでいない現状がある。その理由は2つあり、1つは稼ぎのいいガレキ処理の仕事に人手を取られているためだそうだが、もう1つの原因として補修に対する制度不備が挙げられるだろう。
「いろいろな保証制度を組み合わせても、個人に下りる補助金は最高で約300万円。それらは個人の銀行口座に振り込まれます。その金額では、自宅の補修をするのに精一杯で、階段などの共用部分の費用としては出資してくれないケースがほとんどです。結果的にマンションの補修にお金が回らない制度になっています」(仙台の管理組合関係者)