庭にお稲荷さんを祭ると税金を逃れる!? 相続・贈与税の意外と知らない裏ワザ
「週刊ダイヤモンド 2013/2/2号」の大特集は『相続・贈与 節税完全ガイド』だ。
2010年末の政府の「2011年度税制改正大綱」で記載された改正案で、その後、国会では与野党の衆参ねじれ国会で、なかなか通過しないままになっていた相続税の増税がやっ と実現となった。これまでの不動産バブル時代に拡大したままの相続税の基礎控除枠「5000万円+1000万円×法定相続人の数」から「3000万円+600万円×法定相続人の数」へと大きく減り相続税を負担する人が都内を中心に増える見通しだ(2015年1月から)。
この改正にまつわる相続ネタは、これまでも、何度も特集されてきた。「週刊ダイヤモンド」でもすでに2011/1/22号『相続が大変だ』、2012/8/11・18号『もめる相続 賢い「対策と節税」』、「週刊東洋経済」でも2012/6/30号『あなたを襲う相続税 失敗しない事業承継 葬儀・墓』という特集で相続税が改正されると、煽ってきたが、やっと実現するにいたったものだ。相続税の増税、富裕層への課税強化というキーワードで今後、「週刊東洋経済」「週刊エコノミスト」でも特集がされるだろう。
改正内容については、以前、紹介しているのでこれ以上くわしくはふれない。今回は役に立ちそうな相続にまつわる記事を紹介しよう。
まずは相続でもめやすいのは、兄弟の順が長女、次女、長男の場合だということだ。
「PART2 あなたを直撃 相続大増税」では基礎控除の40%カットで首都圏は4割が申告する時代になるが、親族間で争う「争続」のケースを紹介している。
実は相続でもめやすいケースははっきりとしており、兄弟の順が長女、次女、長男の場合で、さらに長男が両親と別居しているケースがもめやすいのだという。かつての日本は、長男、商売の継承者、同居者らがすべてを受け取る「本家相続」が当たり前だった。しかし、複数の相続人がいて相続順位が同じ場合、均等に財産を分ける「均分相続」の考え方が一般的になった現在、本家相続は5割。本家相続は相続でもめないための知恵だったが、誰が本家かわかりにくい現代でもめやすくなっているのだ。
また、「自宅にお稲荷さん」があるとその部分は相続税が非課税になるという。
記事『ご神体を祭れば敷地は非課税!? 税の最新事情』によれば、自宅にお稲荷さんがある場合の相続税の取り扱いが昨年変わったのだという。
そもそも、自宅の敷地に、お稲荷さんやお地蔵様、不動尊、道祖神などのご神体を祭ることを、これらの社や祠を総称して「庭内神し(ていないしんし)」と呼ぶ。
従来は、相続税法12条で墓所、霊廟及び祭具並びに「これらに準ずるもの」は非課税と定められているため、土地の上に建てた祠(ほこら)は非課税としても、敷地は非課税にならない、まして周辺住民ではなくその家の人たちだけの信仰対象であれば、相続財産としてせいぜい底地評価並み、という裁決や解説書が出回って、そのように取り扱われてきた。
ところがこれを不服とした納税者が税務訴訟を起こし、昨年6月21日、東京地裁は、相続財産の土地のうち、弁天様とお稲荷さんの祠が立っている敷地の部分を非課税とする納税者勝訴の判決を言い渡したのだ。この一審が確定し、国税庁も取り扱いを変更する「お知らせ」をホームページ掲載した。
今後は庭内神しの敷地が非課税財産か否かの判定は1・庭内神しの建物や付属設備と敷地の位置関係、設置状態などの外形、2・建立の経緯や目的、3・現在の礼拝の状況などを踏まえて、敷地と密接不可分の関係にあるかいなかを踏まえて「個別に」判断することになるという。 この判決を踏まえて、庭にお稲荷さんを祭って、その土地を非課税にさせようという動きが出るかもしれないが、周辺住民も信仰しているかなど、税務署からの厳しいチェックがありそうだ
(松井克明/CFP)