状態が良くて割安の中古車は、そうあるものではない。運良く見つけることができたとしても、今度は自動車取得税などの車体課税がネックとなる。
さらに、維持費の存在も大きい。実は、ガソリン代や車検代といったクルマの維持費のなかには何種類もの税金が含まれている。しかも、単に種類が多いだけではなく、その税額は諸外国と比べて割高なのだ。
なぜ日本のクルマには多くの税金が課せられ、海外と比べてユーザーの負担が大きいのだろうか。自動車業界に詳しいライターの呉尾律波氏に聞いた。
日本の「車体課税」は米国の50倍
まず、クルマに課せられる税金の種類を整理しよう。クルマの税金には、大きく分けて「車体課税」と「燃料課税」の2種類がある。
車体課税とは、その名の通り、車両に課せられる税金のこと。50万円を超えるクルマを購入した際に課せられる「自動車取得税」、新車購入時や車検を受ける際に徴収される「自動車重量税」、そして登録した自動車に毎年課せられる「自動車税」(または軽自動車税)が、それにあたる。
燃料課税は、燃料そのものに課税される税金のことだ。ガソリンの場合は「揮発油税」と「地方揮発油税」、軽油なら「軽油引取税」、LPG(液化石油ガス)であれば「石油ガス税」と呼ばれている。
つまり、購入時には自動車取得税が、所有していれば自動車重量税と自動車税(または軽自動車税)が徴収され、さらに乗っていると揮発油税と地方揮発油税、軽油引取税、石油ガス税のいずれかが課せられるわけだ。
加えて、車両や燃料にはそれぞれ消費税も上乗せされる。これらを合計すると、驚いたことにクルマの税金は9種類にも及ぶのだ。
そもそも、日本の車両課税は諸外国と比べて高いことで知られる。日本自動車工業会の調査によると、「排気量1800cc」「車両重量1.5トン未満」「11年間使用」「車両価格180万円」といった条件のクルマにかかる車体課税は、合計で約70万円(自動車取得税、自動車重量税、自動車税)にのぼる。
ちなみに、ドイツは22.4万円(自動車税のみ)、フランスでは4.2万円(登録税)、アメリカではたったの1.4万円(自動車税ほか)しかかからない。日本の車体課税は、単純にアメリカの約50倍も高いのである。
自動車取得税の代わりに新税導入も
なぜ日本はクルマに関する税金が多く、また車両課税が高いのか。呉尾氏は、その背景をこう説明する。
「日本で自動車の普及が進んだのは1970年前後のこと。揮発油税や自動車重量税は、もともとその際に道路整備を目的とする『道路特定財源』として創設された税金です。『道路整備でもっとも恩恵を受けるのは自動車ユーザー』という考えに基づいて、クルマに多くの税金がかけられました」(呉尾氏)
しかし、高度経済成長期ならともかく、近年はほとんどの道路が整備されている。道路特定財源への疑問や重税感を訴えるドライバーも多いのが実情だ。
「そのため、道路特定財源制度は2009年度に廃止されています。ところが、税金を徴収する理由がなくなったにもかかわらず、政府は財政難を理由に一般財源化し、今でも自動車ユーザーから徴税し続けているんです」(同)
ただし、自動車取得税に関しては、消費税が8%に増税されたタイミングで減税されている。また、消費税が10%に引き上げられる2019年10月には、自動車取得税は廃止される見込みになっているという。