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総合商社M、平然と取引先にバックマージンを要求する不正の実態…双方にメリット?

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「Thinkstock」より
 ヤクザやアウトローなどの裏社会を生き抜くためのメソッドを、“表”ビジネスで有効活用することを目的としてまとめた『ブラック・マネジメント』(双葉新書)の著者・丸山佑介氏が、ビジネスの現場に蔓延する「ブラック・マネジメント」を解説します。
 
 ビジネスシーンでの駆け引きというのは、言葉が重視される。裏社会でも同じで、「言葉」による戦いが命すら左右するほど重要な意味を持つ。安易に「イエス」と発言したばかりに、トラブルに巻き込まれてしまった事例を挙げればきりがない。

 ところが、言葉以上に重い意味を持ち、相手に行動を促す強力な強制力を持つモノがある。それが「請求書」による圧力だ。請求書によってかける圧力とは、実際にどのようなものなのか?

 繊維などの資材を扱うメーカーに勤務する40代のRさん(仮名、課長職)は、取引先である日本を代表する総合商社M社の担当者から、請求書による圧力をかけられたという。

「最初は意味がわかりませんでしたよ」

 Rさんのもとに届いたのは、飲食店の請求書だった。当たり前のことだが、お店で飲み食いした場合には、カードでも現金でもその場で決済する。ところが、接待が前提の飲食代金については、直接会社に請求できるよう「請求書払い(後払い)」にすることがある。原田さんのところに届いた請求書もその類いのものだったが、身に覚えがない。

 ところが、請求書はM社の担当者から送られてきた資料にクリップでとめられていた。当然のことながらRさんは確認の電話をかけたが、「あの、封筒に……」と請求書のことを言いかけるやいなや「よろしく~」と軽い調子で返され、切られてしまったのだ。

 馴染みのない人にとっては、まったくもって意味不明な展開だろう。しかし、これはまたビジネスの世界では起こりうることなのだ。通常「バックマージン」と言われており、流通業界でいうリベートと同じ意味で使われている。つまり、メーカーなどが自社製品を売ってくれた小売り店などに対し、売上金の一部を現金でキックバックする「見返り報酬」などもそれに似ている。

 Rさんにも当然ながら心当たりがあった。

 細かい計算をして算出したM社向けの見積もり金額について、M社と合意。だが、最終的にM社から提示された金額は、合意した金額に300万円上乗せした金額だったのだ。

「あんなに細かく計算させておきながら……」と思い上司に報告したところ、「それでいいんだ」と言われたので、そのままにM社に提出しておいたのだ。

 そこへきて、飲食店の請求書が届いた。つまり、M社がRさんの会社に上乗せして支払った分を使って、Rさんの会社が、このM社担当者の飲食代を支払う。それがM社担当者の意図だったのだ。

 懐が寂しいとなれば、目の前を動く大きな取引額から、自分だけが多少美味い汁を吸いたいと思うのも無理からぬことだろう。

●バックマージンは最も身近な禁じ手のひとつ

 バックマージンを要求する手法は、ビジネスシーンはもとより、裏社会やアングラな業界でもそれほど珍しいことではない。厳密には裏社会ではないが、道行く女の子に「風俗やキャバクラで働かないか」と声をかけるスカウトは、自分がスカウトしたキャバ嬢や風俗嬢の売上からバックマージンをもらうことで利益を得ている。

 仮にオモテとウラで違いがあるとすれば、「規制の有無」程度だろう。そもそもルール無用で儲けた者勝ちの裏社会において、バックマージンなど規制の対象となるはずもなく、通常オプションのひとつぐらいにしかカウントされない。

 一方でオモテの社会では、こうしたやり方は会社から告発され、国や公的機関のプロジェクトであれば違法となってしまう。今回のケースでは、会社の支払額を水増ししたM社の担当者が自分のメリットに結びつけた。

 この手法でポイントとなるのは、「無言の圧力」である。いくらなんでも露骨な賄賂のような現金のやり取りがあっては目立ってしまう。