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西武HDへTOBのサーベラス、記者会見でも「友好関係望むが強行手段」の疑問に答えず

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西武西武HD傘下のプリンスホテルが運営する
「ザ・プリンス・パークタワー東京」
(『Wikipedia』より)
 やはり上限は引き上げられた。

 昨日4月5日、サーベラス西武ホールディングス(HD)株の公開買付け(TOB)における買付け予定の上限を、従来の4%から一気に12%に引き上げるとともに、TOB期間も5月17日まで延長した。上限いっぱい応募があった場合のサーベラスの保有割合は36.4%から44.67%にはね上がる。

 一般に株主総会での議決権行使率はおおむね7~8割なので、44%も握れば実質過半数を握ったも同然だ。だが、昨日夕刻の会見でサーベラス側は「(目標は)過半数ではない」ことを強調。同時に取締役の推薦人数も、従来の3名から一気に8名に増やし、今回の株主総会で改選期を迎えない1人を含めると、サーベラス推薦の取締役候補は合計で9名になる。

 「(後藤高志社長以下、)現経営陣9名の退任を迫るものではなく、あくまで追加の提案であり、会社提案として株主総会に付議してもらいたい意向」であり、「役員定数18名のうち過半数にならないように考慮し、企業統治と内部統制の改善に寄与できる人材の中から8名を選んだ」(サーベラス・ジャパン鈴木喜輝社長)という。

現在9名しかいない取締役を一気に倍にする、つまりそれだけの頭数の“企業統治と内部統制”の専門家を投入しないと、西武HDのガバナンスは正常化しないと言っているも同然だろう。しかも「9名のうち4名はサーベラスからまったく独立した立場の人なので、たとえサーベラスの推薦であっても、経営情報を吸い上げることはもちろん、サーベラスが取締役会に対し影響力を行使することも不可能だし、そのつもりもない」と言うのだが、この発言を額面通り受け止める市場関係者は少ない。

 そもそもまったく独立した立場の4名の中には、今回サーベラスの代理人を務めている岩倉正和弁護士と同じ西村あさひ法律事務所の江尻隆弁護士が含まれており、江尻弁護士はあおぞら銀行の監査役を務めた経験を持つ。また、取締役の選任は株主総会の決議事項だが、代表取締役の選任、解任は取締役会の決議事項なのだから、“後藤おろし”のシナリオを想像するなというほうが無理だろう。
 

●語られなかった矛盾の理由

 サーベラスは今回の会見でも、繰り返し「今回のTOBは、西武HDのガバナンスの正常化のためにやっていることなのだ」と訴え続けた。ここまでガバナンスに問題があると言われれば、「特定の大株主の無理難題を押し戻している現在の姿こそ、ガバナンスが正常に機能している証拠だ」という主張の西武HD経営陣がさらに態度を硬化させることは間違いない。

 会見にはサーベラス・ジャパンの鈴木社長のほか、米ニューヨーク本社(サーベラス・キャピタル・マネジメント)の幹部であるルイス・J・フォスター氏も出席。会見の終盤で、産経新聞の記者が「お互いに対話を求めていると言いながら、TOBという手段をとって、さらに上限を引き上げるという行動は、いっそう西武HD経営陣の態度を硬化させる理由になると思う。かえって関係の改善にとってマイナスにならないのか?」という質問をフォスター氏に投げかけた。

 だが、フォスター氏の回答は「我々は企業統治と内部統制に重大な問題を抱えている西武HDに対し、企業統治と内部統制の改善のための提案を行ってきたのに、ことごとく西武HD経営陣に拒絶された。このまま何もしなければ、西武HD経営陣に変わってもらえない。企業統治と内部統制の改善達成のための我々の提案を受け入れてくれるよう、今も希望している」といい、質問への明確な回答をしなかった。

 通訳を通した会見には質問と噛み合わない回答は付きものとはいえ、本件の取材にかかわっている人であれば誰もが思う「対話を求めていると言いながら、やっていることは西武HD経営陣を硬化させ、より関係を悪化させる効果はあっても、対話の再開にはマイナスな行動ばかり」、つまり言っていることとやっていることが一致しないように見える、という極めて素朴な疑問への回答は今回もついに聞けなかった。いっそのこと、「西武HDの経営陣に、降参して頭を下げさせるためにやっているのだ」と言われれば納得できる。

BusinessJournal編集部

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