(「銀座ルノアールHP」より)
『去年ルノアールで』(せきしろ著、マガジンハウス刊)は、知る人ぞ知る、喫茶マニアが集う「喫茶室ルノアール」で時間を潰している「私」が客や店員の様子を観察するうちに異次元の世界に没入してゆく姿を描いたエッセイである。テレビ東京でドラマ化されて放映された。
「喫茶室ルノアール」の運営会社は、株式会社銀座ルノアール(東京・中野、小宮山文男社長)。1964年に有限会社花見煎餅(東京・中野)の喫茶部門が独立して日本橋に第1号を開店した。
駅前の店が多いにもかかわらず、ゆったりした座席配置となっているのが特徴。ルノアールは「昭和の喫茶店」の代名詞だった。
銀座ルノアールとキーコーヒー(東京・港、柴田裕社長)の資本・業務提携がルノアールのファンを驚かせた。キーコーヒーは、銀座ルノアールの親会社で筆頭株主の有限会社花見煎餅の全株式を取得した。銀座ルノアールの発行済み株式の21.86%を間接保有する。資本業務提携は2013年1月にスタートの予定。わかりやすくいえば、キーコーヒーが銀座ルノアールを買収したということだ。
銀座ルノアールは、設立から50年の節目に当たる13年3月期を「第2の創業年」と位置付け、「喫茶室ルノアール」の看板だけに頼らない経営を打ち出している。その決断がキーコーヒーの傘下に入ることだった。
「第2の創業」では従来型の直営方式の喫茶店に加え、セルフ式フランチャイズチェーン(FC)店を展開することになった。
FC展開するのはブレンズコーヒー。今年3月、国内でブレンズコーヒーを展開するビー・アンド・エム(B&M)を買収し、子会社にしてマスターフランチャイズ権を獲得した。
ブレンズコーヒーは、カナダのブリティッシュコロンビア州バンクーバーを拠点とするセルフ式コーヒーチェーン。日本では00年からB&Mがフランチャイズを展開、東京・神奈川に6店舗あり、コーヒー表面にミルクの泡で絵を描くラテアートを売り物にしている。これが他のコーヒーチェーンとの違いだ。
B&Mの新社長には、創業家3代目の小宮山誠取締役(38)が就任。ブレンズコーヒーのフランチャイジーを募り、多店舗展開を図る。
強い危機感から、ブレンズコーヒーのFCチェーン化に経営の舵を切った。13年3月期の銀座ルノアールの売上高は67億7400万円、営業利益は2億2500万円の見込みだが、セルフ式コーヒーチェーンの大手各社の足元にも及ばない。
スターバックス コーヒー ジャパンの13年3月期の売上高は1134億円の見込み。ドトールを展開するドトール・日レスホールディングスの13年2月期の売上高は1106億円を予想。伊藤園傘下のタリーズ コーヒー ジャパンの12年4月期の売上高(の実績)は233億円だった。
銀座ルノアールはブレンズコーヒーのFC展開で15年3月期末までに直営店とFC店を合わせて200店、売上高100億円の青写真を描く。12年3月期末の店舗数は直営店を主力に110店。フードビジネス総合研究所の調べだと109店舗(11年3月末時点)ということになる。