ビッグエコーの第一興商、恐怖のパワハラ&リストラの実態「ぶっこんで潰すぞテメェ!」
カラオケ機器大手「第一興商」で労働事件が勃発している。原告は山成遊氏(実名、38歳)。山成氏の訴えは次の通りだ。
山成氏は99年の入社後、事務畑を歩んできたが、05年9月、突然、配転命令を受けた。異動先は、特販営業部(以下、特販部)だった。ここは、もともとは大手カラオケボックス数十社に対するルート営業をする部署だったが、新規開拓部門として再編され、それまでの1課のみ約7人の組織から、5課43人の大所帯になった部署だった。
「特販部は、営業未経験者が3割ほどで、上は50歳過ぎから、下は20歳前後まで、色々な年齢層の人が配属されていました。社内では『リストラ部署』と呼ばれており、実際、当時の緑川智博・常務取締役は、社内で公然と『新生特販部は、うば捨て山だ』と言っていたほどです」(山成氏)
山成氏は、その異動で特販部2課に配属された。その時に、A課長から各部員に課されたノルマは、年間4000万円以上の売り上げ。カラオケ機器、モニター、スピーカーの1セットは約100万円なので、ノルマ達成には1カ月3〜4セットのペースで売らなければならない。
当時、カラオケ市場はすでに飽和状態で、新規開拓でこのノルマを達成することは困難だったが、A課長は、毎週の営業会議で、「なぜ売れないんだ! いつまでに売るんだ!」と怒鳴りつけ、会議以外の場でも、毎日、「いつまでにノルマを達成するんだ!?」「俺の営業方法が気に入らなければ辞めるしかねぇぞ!!」「会社員は、辞めるか上司に従うかどっちかなんだぞ!」「おまえ、頭や考え方がおかしいんじゃないのか!」などと罵り続けたという。
山成氏によれば、特販部に配属された社員たちは、過剰なノルマ地獄から逃れるために、社内の人脈を辿って他部署に引き揚げてもらう動きを水面下で行っていたほどだという。当時社内では、こうした活動をすることを、北朝鮮の金日成の首を取る秘密特殊部隊を題材にした韓国映画『シルミド』になぞらえたり、他部署への異動がかなった従業員に対して「『脱北』できてよかったね」と言い合ったりしていたという。特販部は半年後には、半数の20人に減少した。
こうした中で山成氏が受けた、恐るべきパワハラの一例を紹介しよう。
ある日A課長は、特販部の部屋に入ってくるなり、突然、机や椅子を蹴り飛ばしながら、外回りに出掛けようとしていた山成氏を呼び止め、ほかの大勢の従業員がいる前で、「俺の言うことを聞けと言ってんだよ! 分かってるのか! ぶっこんで潰すぞテメェ!! なめんじゃねえぞ!! 返事しろ!! オイ!!」と大声を張り上げ恫喝してきたのだという。
山成氏は、何が何だか訳が分からず、A課長の鬼のような形相に恐れながらも、「お客さんのところへ行かないといけないのですが……」と言うと、「行くなと言っているだろうが!!」と怒鳴ってきた。この一件で山成氏はますます精神的に圧迫され、ストレスの蓄積はピークを迎えつつあったという。
07年4月1日、山成氏は突然、「営業統括本部DSサービス部」(以下、DS部)に異動となった。がしかし、やっと脱北できた、との喜びも、ほんのつかの間でしかなかった。
DS部について、山成氏はこう説明する。「この部署は、名目上は企画部門でしたが、企画とは名ばかりで仕事がない部署でした。リストラ要員を集めた、はきだめ、というか、吹きだまり、のような部署でした」