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高齢化・都市化時代に新ビジネスの兆しも

ブームの散骨葬は法的にOK? 変わりゆく葬式ビジネスと背後にある過疎化問題

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お墓ないのも寂しい?(「Thinkstock」より)
 少子高齢化が進む日本は現在、さまざまな問題を抱えている。例えば、地方の過疎化と都市への集中は、「空き家問題」を引き起こしている。地方を出て都市部で就職をした若者は、地元に戻ることはなく、その実家は親が亡くなると「空き家」となる。地方都市では、こうした空き家が量産され大問題となっている。

 同様の問題が「墓地」にも起きている。地方から都市部に出てきた人々は亡くなっても、地方にある先祖代々の、あるいは親の墓には入らない。さらに、頻繁に墓参りに出向くこともできない。

 こうした状況下で、1991年、現在はNGOとなった「葬送の自由をすすめる会」が散骨を故人の権利として推進した。当時、刑法第190条の「遺骨遺棄」や墓地埋葬等に関する法律に抵触するのではないか、との問題点が指摘された。

 墓地、埋葬等に関する法律では、第4条に「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない」と定められている。これは、埋蔵つまり納骨をする場合の法律であり、埋蔵つまり散骨を法律的に規制するものではない。

 これに対して、法務省の「葬送を目的とし節度を持って行う限り、死体遺棄には当たらない」という非公式見解が出たことで、散骨が広く知られるようになった。

 島根県海士町は04年、地域活性化として「島まるごとブランド化」を打ち出す。その方策のひとつとして07年6月に「散骨を行う会社」を起業する。

 海士町の諏訪湾入り口にある、カズラ島という無人島を散骨所にした。自然を守るため、島内での散骨は5月と9月の2回に制限、それ以外の時期、人は島内に立ち入れない。また、遺骨は細かいパウダー状にして散骨しなければならないという自主規制を行っている。さらに、散骨以外では島内に入れないため、お参りは対岸に設けられた慰霊所で行うことになる。

 一方で散骨は、北海道長沼町、長野県諏訪市、埼玉県秩父市、静岡県御殿場市などで地域住民との間でトラブルを引き起こし、これらの自治体では散骨を規制する条例を設けている。

 また、近年、急速に拡大している埋葬に“樹木葬”がある。12年夏、都立小平霊園内に「樹林墓地」が整備された。この樹林墓地は、一般的に「樹木葬墓地」と呼ばれるもので、樹木の下に納骨する墓のタイプ。墓石の代わりに樹木を使ったもので、先述した散骨は遺灰をまくのに対して、きちんと墓地として認可をされた場所に遺骨を埋める(納骨)する。

 東京都の「樹林墓地」は区画内に27カ所の穴を開け、ひとつの穴に約400体分の遺骨を納める。当然この場合、血縁を超えた他人との合葬となる。故人の遺骨を血縁者が申し込む方法と、本人が生前に申し込む方法と2つの方法がある。

 使用料は1体で約13万円(粉骨の場合には約4万円)と、従来の墓地に比べて安価な設定となっている。安価な点が好まれたのか、小平霊園の場合には500人分の募集に対して、8000人(16倍)以上の申し込みがあった。

 もっとも、小平霊園の普通の墓地にも10倍以上の申し込みがあるため、特に樹林墓地の人気が高いとは言い切れないかもしれない。

 ただし、横浜市も東京都に先駆け、08年に樹木葬墓地を始めているが、両者には共通項がある。それは、一般の墓地が生前に申し込めない一方で、樹木葬墓地は生前の申し込みが可能なことから、後者の比率が圧倒的に高いこと。これは、散骨と同様に埋葬の形態がそれだけ多様化していることの表れでもある。

 実は海外でも樹木葬が普及し始めている。しかし、事情は日本とは若干違うようだ。韓国や台湾では、国土面積が狭いことから土葬用の土地が不足する懸念や、自然保護の観点から樹木葬が推奨されている。一方、欧米では環境問題の一環として埋葬が考えられ、樹木葬が薦められているようだ。

 国内では、99年に岩手県で初の樹木葬墓地が誕生したのを皮切りに、寺院や霊園開発業者、NPOなどが樹木葬の運営を行っている。これからの時代、埋葬や墓碑は家族のあり方にとって大きな問題だ。

 そして、埋葬は新たなビジネスとしても可能性を秘めている。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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