発端はユニバーサル社によるフィリピンでのカジノリゾート建設事業である。2012年1月31日に着工した「マニラベイリゾーツ」(2014年開業予定)はカジノ付きの高級ホテル2棟を中心に、150以上の店舗を揃えたショッピングモール、レストラン、富裕層向けレジデンスなどの複合施設であり、総工費23億ドル(約2200億円)という超大型プロジェクト。
ところがフィリピンには、カジノ事業に関して外資規制がある。海外メーカーがフィリピンでカジノ経営を行うことは、現行法上では認可されない。ユニバーサル社のカジノリゾートは、フィリピン政府から経済特区認定がなされ、外資規制も外されている。その認可を得るために、政府高官に賄賂が贈られたのではないかという疑惑が持たれているのだ。
ユニバーサル社関係者A氏は、次のように話す。
「アメリカ・ネバダ州にはネバダ州ゲーミングコントロールボード(以下GCB)というカジノに関して許認可や税務調査を行う機関があります。ユニバーサル社の関連会社にアルゼUSAがあり、この会社をGCBが調査したところ、4000万ドルの使途不明金が出てきたわけです」
FBIは4000万ドルの流れを調査、それが香港のフューチャーフォーチュン社を経由してフィリピンに送金された事実を確認した。そしてこのフューチャー社も、ユニバーサル社の子会社である。
4000万ドルのうち3500万ドル(3000万ドルともいわれている)が、フィリピン政府高官と密接なつながりがあるカジノ経営者、ロドルフォ・ソリアーノの会社口座に入金されたことまではわかっている。そこから先のお金の流れを追うには、フィリピン政府と日本政府の協力が必要だが、フィリピン政府はまったく動こうとしないのだ。おざなりに公聴会を一度開いただけである。事件を調査している警察関係者は呆れたように言う。
「フィリピンは賄賂にまったく罪悪感がないんですね。ソリアーノは公聴会で3500万ドルを受け取ったことを認めていますが、『何が悪い?』と開き直っている始末ですよ」
●知らぬ顔の経営陣は従業員に責任転嫁
一方、経済特区に認可されるために4000万ドルを支払ったとされるユニバーサル社はといえば、社長以下経営陣が「自分たちは知らない」と言い出した。「あろうことか、従業員1人のせいにして、代表取締役の岡田和生以下、一切知らないと裁判を起こしたんです」(前出のA氏)
この従業員は退職、現在、ユニバーサル社から損害賠償請求を起こされている。「めちゃくちゃな話でしょう。会社を挙げて取り組んでいるカジノリゾートで、40億円もお金が動いたのに社長が知らなかったら、そのほうが経営陣に問題がないですか?」(同)
ここまでなら、海外の企業スキャンダルにすぎない。問題は送金された4000万ドルのうち、途中で消えてしまった500~1000万ドルである。アルゼUSAから4000万ドルが送金され、ソリアーノが受け取ったのが3000~3500万ドル。その差額はどこへ行ったのか?
「政治家への献金にする、裏金作りなんじゃないかと考えられます」(前出のA氏)
フィリピン政府への賄賂の一部を、日本の政治家への献金の裏資金にしたというのだ。誰に渡したのか? すでに朝日新聞などで実名が報道されてはいるが、現時点で確証はない。
しかし、石原慎太郎が東京都知事の職にあった時、なぜカジノ構想にあそこまでこだわりを見せたのか? パチンコ業界から北朝鮮へ送金されるルートを断ち切ると同時に、世界標準の観光地として東京を再構築するというのが大義名分だったが、実際はパチンコ業界から献金を受け、パチンコ業界がカジノにくら替えして生き残る手助けをしていたのだとしたら? だが、石原慎太郎のバックには霊友会があり、資金面で困窮しているという話は聞かない。では、なぜそんな献金を受け取るのかといえば、自分の親族である政治家のためだともいわれている。
ほかにも、ユニバーサル社からの献金は、警察官僚出身の政治家へと渡されたのではないかとの推測もされている。