そんな睡眠に悩む現代人のために、「リズム新横浜 睡眠呼吸メディカルケアクリニック」の医師で、『ビジネスマンの睡眠コントロール術』(幻冬舎)の著者・白濱龍太郎氏に、すぐ実践できる安眠法を聞いてみた。白濱氏は、毎月1700人以上を診察してきた睡眠のエキスパートである。
–寝る前にスマホをいじると安眠が妨害されるといわれますが、本当でしょうか?
白濱龍太郎氏(以下、白濱) 昨今はディスプレイが発するブルーライトの刺激が人体に悪影響があるといわれており、もちろんその影響もあるのですが、実はそれだけではありません。そこに含まれている情報、具体的には、寝る前につい寝床で仕事のメールをチェックしてしまうというのが、よくないのです。
–なぜでしょうか?
白濱 人間には、自分の意思ではコントロールできない自律神経があり、それは活動している時に働く「交感神経」と、リラックスしている時に働く「副交感神経」から成り立っています。深く眠るためには、緊張した交感神経をオフにして、副交感神経のスイッチを入れてやらなければならない。ところが、スマホで仕事の新着受信メールを目にしてしまうと、日中に緊張していた交感神経が再度刺激されてしまい、眠りに就きにくくなります。くれぐれもスマホは寝室に置かず、目覚まし時計を使ってください。
–スマホを使うのをやめても寝付きが悪い場合は、どうすればよいでしょうか?
白濱 あまり知られていないのですが、夜に深く眠るためには、朝にしっかり光を浴びる必要があります。
–目覚めるためでなく、眠るために光が必要なのですか?
白濱 ええ。深く眠るためにはメラトニンというホルモンの分泌が一役買っているのですが、これは、ある程度以上の明るさの光を浴びると、徐々に体内で作られます。太陽光でなくても構いません。そのメラトニンは、光を浴びてから14時間くらいたつと、働きが強まってくる性質があるのです。
●睡眠のゴールデンタイムは午後10時〜午前2時
–時間差で効果が出てくるということでしょうか?
白濱 例えば、午前6〜8時に光を浴びれば、午後8〜10時には眠気が来る準備が整い始める。実は睡眠のゴールデンタイムは、午後10時〜午前2時です。この時間帯に眠るのが最も質の高い睡眠がとれますし、この時間帯さえ押さえておけば、総睡眠時間が少なめでもなんとかなるのです。
–しかし今では、午後10時にはまだ帰宅すらしていないビジネスパーソンが多いと思われますが……。
白濱 特に忙しい方はそうですよね。ですが、少しでも早く帰れる日は、せめて「午前0時に床に就く」ことを意識してみてください。そうすると、午後11時くらいから気持ちの上で就寝の準備を始めるようになるはずです。経営者でも、午前0時を就寝の目標にしている人は多いですよ。
–安眠のために、ほかに注意することはありますか?
白濱 朝食です。前出のメラトニンの生成を促すトリプトファンという物質を、朝食でしっかり摂ってください。特に大豆には多く含まれています。豆腐、納豆、味噌汁を中心とした日本食は、安眠にとってすごくいいんですよ。ほかには、ヨーグルトや牛乳などの乳製品やバナナ。時間がない人は、これらのスムージーを作っておいて、出勤前に飲むだけでも違います。
●短い昼寝を取る
–そもそも、仕事が忙しくて満足な睡眠時間をなかなか確保できない人は、どうすればよいでしょうか?
白濱 メラトニン分泌の小さな山になっている午後2〜3時くらいに、20〜30分の軽い昼寝をすることをお勧めします。
–たった20〜30分で効果があるのですか?