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神戸ハーバーランドはなぜ失敗したのか? 一体的都市計画を無視した土地開発の末路

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神戸ハーバーランド(「Wikipedia」より/663highland)
 どんなに売り上げを誇る流通店舗がテナント入居しても、絶対に成功しない好立地――。これが「神戸ハーバーランド地区」だろう。かつて貨物駅だった国鉄(現JR)湊川駅周辺跡地を、神戸市行政主導で再開発、10年の歳月を費やし、街開きはバブル経済も終焉を迎えた1992年。流通店舗の目玉だったのが西武百貨店の神戸西武だ。

 神戸西武のテナント入居は、当時、神戸市民の間に、不思議な自信と活気をもたらしたものだ。西武百貨店が関東に基盤を置く企業であることから、神戸は大阪を上回る関西一の都市へと成長したかに錯覚したことによる。

 だが、神戸西武は、ハーバーランド出店からわずか2年で業績不振により撤退。一見、好条件に見える立地も、その実は、集客不利な悪条件が重なっていたところが大きい。

●集客を阻む国道2号線と阪神高速道路

 冷静にその立地をひもとくと、いかに集客が難しいかがわかる。JR神戸駅近くとはいえ、駅とハーバーランドには広い隔たりがあり、間を国道2号線と阪神高速道路が通っている。この2つの道路が集客を大きく阻む。景観的にも、地上を通る阪神高速道路は、駅周辺地域と、海側に位置するハーバーランドを大きく遮っているように見えてしまう。

 では、地下を通るとどうだろう。長い階段、もしくはエスカレーターで地下に入ると、ここには飲食店などが軒を連ねているが、これらがかえって海側に位置するハーバーランド各店舗との隔たりを大きくしている。そしてまた長い階段、もしくはエスカレーターで地上に出て、さらに歩かなければならない。これではハーバーランドまで足を運ぶのもひと手間だ。

 再開発後の街開きから現在に至るまで、JR神戸駅、神戸市営地下鉄ハーバーランド駅周辺で働くサラリーマンの間ですら「わざわざ海側まで出なくとも、食事や買い物は事足りる」という声が大勢を占める。ハーバーランドの再開発で、恩恵をあまり受けていないことを裏付ける話といえよう。

 ハーバーランドへのアクセスを考えた道路づくりをそもそも行っていなかったのか、徒歩だけではなく、車でも不便だ。高速道路を使うと、ハーバーランドの入り口はとてもわかりにくい。国道2号線から行くとしても、時間帯によっては渋滞がひどく、たどり着くまでに非常にストレスがたまる。また、ハーバーランドの出入り口での事故も頻発している。

●計画性のない街づくりをする行政

 そもそも都市づくりは、ハコモノと道路、神戸のような港町であれば、港湾建設(マリコン)も含めた一体的な都市計画が必要である。にもかかわらず、ハーバーランドでは、都市全体の整備とハコモノ建設については神戸市、道路づくりについては国土交通省、といった具合に、国と地方自治体が入り乱れた都市計画行政が行われている。

 ある国土交通省の職員は「関東の再開発では、国道とか高速道路など“動かせないもの”と、“動かすことが可能なもの”を分別し、動かすことが可能なものでも、再開発による工事期間中、都市が機能するのかを、地方自治体、そして実際に街づくりの実務に当たるゼネコンや建設コンサルタント業者は考えた上で動く 。だが、関西は大阪、兵庫、京都のどこの地方自治体も“とにかくつくる”の一点だけで動く。これでは機能的な都市づくりは行えない」と苦言を呈す。

 こうした場当たり的な都市計画だからこそ、集客を高めるための再開発地区に顧客の心理的な壁となる国道2号線と阪神高速道路への対策が一切なされていなかったといえよう。そうして、せっかく誘致したテナントは、軒並み撤退を余儀なくされる。

「今度は何年持つかな。いつまでハーバーランドにいてもらえるのだろう……。そんな気持ちで見ています」(神戸駅周辺地域住民)

 街開きの時、最初にテナント入居した西武百貨店が撤退後、人材派遣会社パソナが出資した神戸ハーバーサーカスも、入居8年で累積損失65億円を計上し撤退。その後、ビーズキスとして装い新たに再出発したものの、これも不振。ファミリオが後を引き継いだが、結果は振るわず。ヤマダ電機傘下の家電量販店・星電社、阪急百貨店も撤退した。そして2013年4月、イオンモールが入居し現在に至っている。
(文=秋山謙一郎/ジャーナリスト)