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西武HDvsサーベラスの対立構図を解き明かす

【追記あり】西武HDの背後にJR東海!? TOBで激化するサーベラスとの攻防に政府も参戦!

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レオも激怒。(「Wikipedia」より)
 

 米投資会社、サーベラスが西武HDに提案した45項目の経営改善策が3月21日明らかになった。サーベラスの関係者が時事通信の取材に応じたものだ。

 時事通信の報道によると、「西武鉄道の不採算路線の廃止やプロ野球球団・西武ライオンズの売却は『提案していない』」と説明したという。
サーベラス側は近く、西武HDの経営課題に対する見解として、提案内容を開示する、とも言っている。

 提案でサーベラスは、3カ年計画で実施すべき30項目の検討課題と、より長期的な15項目の戦略課題の検討を西武HDに求めた。

 戦略課題にはインフラ輸出の一貫として、東南アジア諸国に鉄道の運行システムや管理ノウハウを提供する案や、傘下のプリンスホテルを国際展開する案を盛り込んだ、としている。

 一方、サーベラスが西武鉄道多摩川線や秩父線、山口線の廃止や、球団売却を要求したとの一部報道に関して、サーベラスの関係者は「鉄道という公共機関の重要性や日本におけるプロ野球の意味はよく理解しており、路線廃止などを強要したことはない」と述べた。「強要したことはない」とはビミョーな言い回しだ。

 西武HDの有識者会議が3月19日に開いた初会合で「西武HDの事業は鉄道やホテルなど公共性が高い。一部の株主の利益を代弁することはそぐわない」として、「サーベラスのTOBに反対すべきだ」との意見でまとまったことを受けて、今度はサーベラス側が反撃に出た、という構図である。

 西武HD側は日経新聞などを使い、サーベラスは時事通信に情報を流した。情報戦はこれから一段と活発になるだろう。
(※ここまで追記)

 西武鉄道やプリンスホテルなどを傘下にもつ西武ホールディングス(HD、非上場)の再上場を巡り、経営陣と筆頭株主の米投資会社サーベラスの対立が泥沼化。米国の大手ファンドvs安倍晋三首相の応援団という、実におもしろい対決になった。

 これまでの経緯を述べておく。サーベラスは3月11日、株式公開買い付け(TOB)で西武HDの株式を買い増すと発表した。サーベラスグループは32.4%の株式を持っているが、最大で持ち株比率を36.4%まで引き上げを目指す。株主総会の特別決議で拒否権を行使できる3分の1超をキープして、経営への影響力を強めるのが狙いだ。

 サーベラスはTOBに合わせて、6月末の西武HDの定時株主総会に元金融庁長官の五味廣文氏(現・プライスウォーターハウスクーパース総合研究所理事長)、元商船三井社長で日本郵政公社(現・日本郵政)初代総裁の生田正治氏、あおぞら銀行取締役の白川祐司氏の3人を取締役候補として提案。後藤高志社長の交代を求め、五味氏を社長に擁立する構えだ。

 対する西武HDは、サーベラスのTOBについて、助言を行う(といっても内実は反対するための応援団である)有識者会議を設置した。メンバーは富士フイルムホールディングスの古森重隆会長、JR東海の葛西敬之会長、JR東日本の清野智会長、弁護士の笠間治雄氏(前・検事総長)の4人。安倍晋三首相の後援会「晋成会」会長の後藤社長に、安倍氏の応援団である財界人が援軍として駆けつけたかたちだ。6月末の株主総会に向けて、両者はプロクシーファイト(委任状争奪戦)に発展していく可能性は大きい。かつて小泉純一郎政権で構造改革を担った同志の“内ゲバ”の様相を呈してきたから二重に興味深いのだ。

 東証1部に上場していた西武鉄道は、有価証券報告書の虚偽記載問題で2004年12月に上場廃止となった。西武鉄道のオーナー、堤義明氏も証券取引法違反で05年3月に逮捕され表舞台から消えた。

 経営危機に陥った西武鉄道グループの再建を主導したのは、メインバンクのみずほコーポレート銀行である。後藤高志副頭取(当時)を送り込んで、創業家一族の持ち株比率を大幅に減らす荒療治を断行した。堤家の持ち株会社であるコクドを、堤家の資産管理会社と事業会社に分割して、事業会社をプリンスホテルが吸収合併した。この間、西武鉄道は第三者割当増資を実施し、サーベラスが1000億円、日興プリンシパル・インベストメントが600億円出資した。2006年2月、西武鉄道とプリンスホテルの持ち株会社、西武HDが設立され、後藤氏が社長に就任した。

 西武HDの大株主名簿(12年3月末時点)によると、サーベラスグループ3社で32.42%を持つ筆頭株主。2位はNWコーポレーションの14.95%。NW社はコクドから分割された堤家の資産管理会社だ。創業者一族の持ち株比率は大幅に減った。もはや、西武グループは堤家の同族企業ではなくなったのである。

 西武HDとサーベラスは当初、昨年12月に東証1部へ上場を目指していた。しかし、再上場に向けた準備の最終段階で両者の対立が激化した。売り出し価格をサーベラスが想定していた価格よりも低く見積もられたのが原因。証券会社が算出した想定IPO(新規公開株)価格は1株当り1000~1500円。より大きなリターンを得たいサーベラスが考えていたのは同2000~2500円と、隔たりは大きかった。

 サーベラスが1000億円を出資した際の1株当りの取得価格は900円程度。出資金は銀行からの借入金で調達しており、その金利分を考慮すると1000~1500円の売り出し価格は低すぎると判断して「ノー」を突きつけた。