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タレントの名誉毀損裁判のカラクリ〜なぜ島田紳助さんは敗訴で、AKBは勝訴?

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タレントの名誉毀損裁判のカラクリ〜なぜ島田紳助さんは敗訴で、AKBは勝訴?の画像1島田紳助さん
 弁護士法人アヴァンセリーガルグループのパートナー弁護士で、企業法務から民事/刑事事件、インターネット関連法務など幅広い分野で豊富な経験を持つ山岸純氏が、話題のテーマや身近な紛争事案などについて、わかりやすく解説します。

●名誉毀損が争われた最近の裁判

 
 週刊誌やタブロイド紙などでは、著名人の不倫ネタや薬物犯罪、暴力団とのつながりなどが、毎週のように、いわゆる「スクープ」として取り上げられています。

 そして、このような「スクープ」の後に必ずついてくるのが、「スクープされた側」と「スクープした側」の間の名誉毀損裁判です。

 古くは、東京都知事の候補者をモデルにした小説が問題となった三島由紀夫著の「宴のあと」事件(昭和39年9月28日判決)があり、このとき、東京地方裁判所は、三島由紀夫や新潮社に対し、当時の金額にして80万円の賠償金の支払いを命じています。

 最近では、アイドルグループ・AKB48のマネジメント会社社長が、「週刊文春」の記事で名誉を傷つけられたとして、発行元の文藝春秋側に損害賠償などを請求した事件の判決で、9月3日、東京地裁は同社側に165万円の支払いを命じました。また、漫才師・中田カウスさんが週刊誌に名誉を毀損されたとして、雑誌社などに対し、5500万円の損害賠償などを請求した事件(平成25年4月26日、大阪地方裁判所は、「裏付け取材を十分にしておらず、記事が真実とは認められない」として、220万円の賠償金の支払いを命じています)や、元タレントの島田紳助さんの事件も有名です。

 島田紳助さんの事件は、平成23年10月15日発刊の「週刊現代」の「京都市内の不動産取引で、島田さんが暴力団組員と同席して交渉した」といった記事によって名誉が毀損されたとして、島田紳助さんと吉本興業が雑誌社などに対し5500万円の賠償金の支払いなどを求めた事件です。平成24年12月12日、東京地方裁判所は、週刊誌による名誉毀損を認め、110万円の賠償金の支払いを命じました。

 ところが、この事件の控訴審(第2審)で東京高等裁判所は、平成25年7月4日、「所属タレントと暴力団との関係を以前から指摘され続けていたのに、吉本興業は事実関係を把握しようとしていなかった」などとして、名誉毀損を認めず、島田紳助さんたちに逆転敗訴を言い渡しました。

●名誉毀損が成立するための要件

 そもそも、「名誉毀損」とはどのような行為を言うのでしょう。

 簡単に言ってしまえば、他人の名誉を傷つける行為となります。もう少し難しい言い方をすると、

(1)不特定または多数の人間に対し、
(2)ある人に関する「事実」を示して、
(3)その人の社会的評価を低下させることを指します。

(1)と(3)は理解しやすいと思いますが、問題は(2)です。単に、「バカ」とか、「ブス」と表現しただけでは名誉毀損は成立しません(単なる「侮辱」のレベルです)。

 あくまで、ある人の行動や、性格、思想、地位などに対し、「あの人の○○は、××である」といったように、「事実関係」を指摘することが要件となります。

 なお、その事実が、真実か虚偽かは問われません。真実を言いふらした場合でも、名誉毀損は成立するのです。

 島田紳助さんの例で言うならば、

(1)「週刊誌」という不特定多数の人間が閲覧する情報媒体を使って、
(2)「島田紳助さんは暴力団との深い付き合いがある」という「島田紳助さんの事実」を示して、
(3)社会悪と評価されている暴力団と付き合っている島田紳助さんは信用できない、テレビに出るべきではない、といった評価を生み出す

という行為が、名誉毀損となります。

 そして、このような名誉毀損行為は、民事事件としては、損害賠償責任などを根拠づける不法行為となりますし、刑事事件としては、「名誉毀損罪」として刑事罰の対象となったりします。

●果たして、名誉毀損による賠償金の相場は?

 このように、民事事件としての名誉毀損行為は損害賠償責任の対象となります。

 ところで、名誉毀損行為によって社会的評価が下がった場合の「損害」は幾らが妥当なのでしょうか?

 交通事故により足を失った、空き地から飛んできた野球ボールで壷を割られた、といった場合の「損害」は、足を失ったことで失った労働能力から算出したり、割られた壷の値段から算出できます。

 しかし、ある人の社会的評価というものが、受け手側の属性によって千差万別であり(例えば、男性・女性それぞれの見方の違いもありますし、年齢層によっても異なります)、かなり主観が入るものである以上、その「低下」を数値化して、「損害」を算出するのは容易ではありません。

 法律家の端くれである私が言うのもなんですが、結局のところ、“どんぶり勘定”的な要素が多分にしてある、と理解してくださって結構です。

BusinessJournal編集部

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