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消費増税、安倍政権内から懸念の声、一枚岩に綻びか…デフレ脱却、景気回復にも暗雲?

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安倍晋三首相
(「Wikipedia」より)
 “一枚岩”と見られた安倍晋三政権、アベノミクス政策に“微妙な亀裂”が発生している。

 甘利明経済財政・再生相は9月9日、好結果だった4~6月期のGDP(国内総生産)改定値と2020年夏季五輪の東京開催が決定したことで、「消費増税判断にいい材料が加わった」と発言した。さらに、10月1日に発表予定の日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)を見た上で、「安倍総理は10月1日に消費税率の引き上げについて判断するだろう」と述べた。この発言は、事実上、東京五輪の決定が消費税率の引き上げにつながったことを示唆したものだ。翌10日、安倍晋三首相は成長戦略第2弾などを含めた経済対策の検討を指示した。消費税率引き上げによる景気への影響を和らげる狙いがある。

 そもそも、消費税増税法案は、12年8月に民主党政権下で成立した。14年4月に8%へ、15年10月に10%へ、2段階で引き上げることが定められている。ただし、景気の状況を見ながら消費税率引き上げを判断するという「景気弾力条項」が設けられている。これに従って、安倍首相は8月26日から31日まで有識者や業界代表など60人から意見を聞く集中点検会合を行った。

 しかし、アベノミクスがスタートして以降に発表された景気指標について、安倍政権と盟友の黒田東彦日銀総裁らは、 “景気が回復傾向にある”ことを喧伝していた。そのまま、消費税率を引き上げればよいものをなぜ、わざわざ集中点検会合を行い、民主党政権から移譲された“消費税率引き上げの免罪符”を投げ出し、再び自らで免罪符を手に入れようとしたのか?

●安倍政権が増税を再検討したワケ

 民主党が消費税増税の理由として掲げたのは、「社会保障と税の一体改革」の実現だった。社会保障を安定化させるためには、まずは財政を安定させなければならない。そのためには、財政再建を図らなければならず、財政再建の実現には増税が避けられないというロジックだった。

 社会保障改革は時間がかかるため、超党派の「国民会議」で議論を行うということで、三党合意した。この時の立役者は、当時の野田佳彦首相(民主党)と谷垣禎一自民党総裁だった。両者は共に財務相経験者であり、財政の安定を図るための消費税率引き上げだった。

 その後、自民党総裁は谷垣氏から安倍氏に移り、政権は民主党から自民党に移り、誕生した安倍首相が「アベノミクス」を打ち出し、脱デフレ政策による景気回復を目指した。この政策は、財政の安定化とは無縁。景気を回復することが第一義で、そのためには財政拡大も辞さない。つまり、野田・谷垣の考え方とは対極にある。そこで、安倍首相は民主党政権から移譲された“消費税率引き上げの免罪符”を捨て、自らのやり方で再度、“免罪符”を手に入れようとしたのだ。

 消費税率引き上げの本来の目的は、社会保障を安定化させるため、財政の安定化を図ることにある。しかし、安倍政権では、国民会議による「社会保障と税の一体改革」も「中期財政計画」による財政再建策も、明確な具体策は出されないままだ。

●アベノミクス最大の焦点であるデフレ脱却は果たせるのか

 こう見ると、安倍政権は脱デフレに向けて邁進しているように思える。しかし、一枚岩と見られた安倍政権にも亀裂が生じているようだ。安倍首相の経済ブレーンである内閣官房参与の浜田宏一・米エール大名誉教授や本田悦朗・静岡県立大教授が消費税率の引き上げにストップをかけるような発言を始めたのだ。今、消費税率を引き上げれば、景気が腰折れするというのがその理由。

 これに対して、日銀の黒田総裁は予定通りに消費税率を引き上げるべきとの姿勢を貫いている。それもそのはず、アベノミクスの目玉となった日銀による“異次元緩和”は消費税率が引き上げられることを前提にしている。集中点検会合で黒田総裁が、消費税率が引き上げられなかった場合には、「確率は低いかもしれないが、起こったらドえらいことになって対応できないというリスクを冒すのか」と金利急騰の危険性に触れたことでも明らかだ。

 しかし、東京五輪の決定が消費税率上げを確実にした。東京へのオリンピック誘致の最終選考でのフリーアナウンサー・滝川クリステルの“おもてなし”スピーチは印象に残った人も多いだろう。満足な“おもてなし”をするためには、資金がかかる。その資金を調達するためには、消費税率の引き上げを行い、財政に余裕を持たせなければならない。

 信頼していた経済ブレーンの浜田参与らが押しとどめようとした消費税の引き上げを実施に移し、東京五輪をアベノミクスの“第4の矢”と位置付け、財政拡大に邁進する安倍政権は、デフレ経済を脱却し、景気回復を果たせるのだろうか?
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)