日本マクドナルドホールディングスは2013年12月期の連結経常利益が前期比57.9%減の100億円に落ち込むと発表したが、その後も業績悪化の流れは止まらない。13年12月の既存店売上高が前年同月比9%減で、6カ月連続で前年同月比減となった。加えて、13年10月以降、3カ月連続で客数が同月比2ケタ減を続けている。
そんなマクドナルドに対して、モスバーガーを展開するモスフードサービスの業績回復が鮮明になってきた。13年度上半期(13年4~9月)の売上高327億1600万円(前年比6.4%増)、営業利益11億6900万円(同19.3%増)、経常利益12億7900万円(同21.5%増)を計上した。通期予想はそれぞれ654億円(同4.9%増)、25億5000万円(同35.0%増)、28億円(同31.8%増)である。
モスバーガーは数年来低迷していたが、昨年から盛り返してきた。同社は、ハンバーガー全24品のうち17品をリニューアルしたことと、国産肉使用の「とびきりハンバーグサンド」シリーズの好調により、客数が増え、売上高と営業利益に寄与したことが業績回復の要因としている。要は商品力の向上が業績回復につながったといえよう。
低価格商品を出したかと思うと廃止して、今度は高価格商品を投入したりと、相変わらず価格政策のダッチロールを繰り返しているマクドナルドに対して、モスバーガーは一貫して価格競争に参入しなかった。こうしたモスバーガーの戦略について、外食コンサルタントは次のように評価する。
「飲食業にとって、価格競争への参入は禁断の実を食べるようなものだ。モスバーガーは価格を破壊せずに商品の品質を維持するという飲食業の王道に徹し切っている」
●顧客ニーズ吸い取りのための愚直な取り組み
また、商品力の強化には、モスフードが3年前から実施しているタウンミーティングが大きく寄与していると同コンサルタントは語る。
「社長を含む経営幹部数十名がほぼ毎月、全国各地で多くの利用客と面会して、いろいろな意見を吸い上げている。外部の調査会社に委託するとか、社員にヒヤリングさせてレポートを提出させるとかでなく、経営陣が直接、生の情報を収集して歩いているのだ。その積み重ねが商品力の強化につながっている」
モスバーガーの商品力でアピールされるのは、契約農家から仕入れた有機野菜の使用や和風メニューの開発などだが、その背景には率先して足でニーズを吸い上げる、愚直なまでの経営陣の活動がある。
●FC店舗との強い信頼関係
モスバーガーの国内店舗数は約1400店。その8割弱がフランチャイズ(FC)店である。このFCが商品力と並んでモスバーガーのもうひとつの強さなのだ。どのFC本部も「本部とFCは共存共栄」という謳い文句を強調するが、この文句を真に受けるFC加盟候補者は少ない。
その中にあって「モスバーガーは本部とFCの信頼関係が強い」と業務用食材商社の幹部は評価する。スーパーバイザーの精度の高い指導もさることながら「何よりモスのFCオーナーの質が高い」という。それは、加盟時に設けられたハードルの高さを見れば理解できる。