2013年12月期の経常利益は、前年同期比58%減の100億円となった。低迷を続けるマクドナルドだが、なぜここまで不調を極めているのだろうか。
筆者はマーケティングコンサルタントを名乗っているのだが、データだけでなく現場を見ることをデータ以上に大事にしている。データは過去を映し出す鏡だが、現場は今と未来を映し出す鏡だからだ。
マクドナルドの不調も、現場を見れば一目瞭然だ。
決算発表や数値データで読めば、マクドナルド不調の主要因は、高級バーガーの販売不振と客数減ということがわかる。実際に店舗へ行き感じるのは、子どもの姿の消えたマクドナルドの姿だ。その代わり増えたのは、ビジネスパーソンと高齢者だ。
約10年前、390円のサンキューセット(ハンバーガー、フライドポテト、ドリンク)を原動力にマクドナルドは増収増益の快進撃を始めた。当時の競合は、ロッテリアをはじめ同価格帯のハンバーガーチェーンだったが、これらを圧倒してきた。
その後、モスバーガーやフレッシュネスバーガーといった高級志向のハンバーガーチェーンが台頭し、さらに東京都心では1個1000円もするような高級ハンバーガーショップが次々にオープンした。また、ハンバーガーチェーン店の高級化だけでなく、スターバックスコーヒーを筆頭に街中にはカフェが増え、こうした流れの中で、低価格帯で圧倒的な力を持っていたマクドナルドは、脱低価格帯路線に舵を切ったのだ。
その象徴は、「マックカフェ」と新しいコンセプトの店舗だ。
マックカフェにしたことで、店頭からメニュー表がなくなり、店員が一つ一つの注文をさばく時間が長くなった。店員は他のカフェのように注文をゆっくりとさばくようになり、雰囲気としては「スマイル」ではなく「オシャレ感」を醸し出すようになった。料理を出すまでのスピードは遅くなり、その現状を打開するため、今年1月には「ENJOY! 60秒サービス」と銘打たれた、注文から60秒で商品を提供できなければハンバーガー無料券をお客にプレセントするキャンペーンを実施。社内の意識改革、お客さんへのイメージ改革の意味を込めて実施したものだが、現場を見る限り、効果が発揮されたとは思えなかった。
●離れたファミリー層
マックカフェにした結果、マクドナルドのメイン顧客であったファミリー層にとって、みんなで楽しく食事をできる場所ではなくなってしまった。カフェにしたことで、店は以前よりも静かになった。AC電源も設けたことで増えたパソコンで仕事をするビジネスパーソンや高齢者が、ゆっくりくつろいで長居ができる場所になってしまった。
その結果、店舗に行っても空いている席数は少なくなり、活気が減り落ち着いてしまった店内の雰囲気、メニューもなく注文しづらい状況に、ファミリー層は愛想を尽かしてしまったのだ。
当然、客数は減るし、コーヒー一杯で仕事をしたり、寄り合いをする客が増えれば、おのずと商品販売数量は減り、売り上げは下がる。これがマクドナルド不振の根本原因だ。
筆者が店頭での定点観測をしている感触としては、ファミリー層は以前より50%減くらいの印象を受ける。それだけでなく店頭に来たものの、空いた席がなく帰ってしまう客も多いのだ。店を見渡せば、2人席、4人席に1人で座りパソコンをしていたり、寝ている客もいる。