「どうやってこのミュージカルの記事を書くのか。あるいはこの記者会見の様子を伝える記事をどのように書くのか。中身は秘密ですから、作品のストーリーはまったく書けない。でも記事にしなければならないから、記者会見に集まった皆さんの技量が問われますね」
ミュージカル上演実行委員会の賛同人、「週刊金曜日」(金曜日)発行人の北村肇氏が、いみじくもこう言った。実際、何が秘密かわからない特定秘密保護法をテーマにしたミュージカルなので、何が秘密かわからない設定になっているはずだ。
昨年12月6日に成立し、今年12月12日までに施行される予定の特定秘密保護法に対しては根強い廃止運動が今でも続いており、演劇界でも大きな話題になっている。
「ある日、突然逮捕されました。容疑は『秘密』だそうです」という宣伝文句が話題にもなった『それは秘密です。』(劇団チャリT企画)の上演が、大好評のうちに8月3日に終わったばかりだ。『THE SECRET GARDEN』は、それに続いて10月22日~26日に東京の中野区立野方区民ホール「WIZホール」で上演される。
●運用基準の素案で疑惑拡大
特定秘密保護法は、防衛・外交・テロ・スパイ活動などに絞って行政の長が特定秘密を指定し、違反者に重罰を科す法律だ。
特定秘密の定義があいまいで、独立した第三者機関によるチェックはないに等しい。秘密の内容が明らかにされないため、裁判も成立しない可能性が高い。加えて、実際に犯罪を実行しなくても、「相談」「そそのかし」「あおり立て」をするだけで罪に問われる。
そもそも、何をしたら罪になるのか一般の人は知り得ず、したがって逮捕されても、具体的にどのような罪を犯したかわからないまま、事実上の秘密裁判で最高懲役10年を科せられ、社会的に抹殺されることになる。法治国家・民主国家ではあり得ない法律であり、廃止しなければならないものだ。
そのため全国各地で反対運動が拡大し、違憲差し止め訴訟も全国で3件起きている。現在は、有識者の意見を参考にして政府がまとめた「運用基準」素案に対するパブリックコメント(意見公募)を8月24日まで受け付けている。
運用基準素案では、秘密指定があいまいでほぼ100%を行政が決められ、永久秘密に指定でき、指定が解除されたとしても、それを公開せずに政府の意向次第で廃棄できる。行政の独裁を助長することが明らかになり、反対運動の火に油を注ぐ結果となっている。
このような秘密保護法の問題点を、ミュージカルという手法でいかにして表現できるか、実に興味深い。