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新生VAIO本格始動、なぜ早くも失望感広がる?曖昧な商品&販売戦略に疑問続出

文=福井晋/フリーライター
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新生VAIO本格始動、なぜ早くも失望感広がる?曖昧な商品&販売戦略に疑問続出の画像1「VAIO Pro 13」(ソニー直販サイト「ソニーストア」より)
 ソニーが投資ファンド・日本産業パートナーズに売却したパソコン事業部門が7月1日、新会社VAIO(以下、新会社)として業務を開始した。

 ソニーは1996年にVAIOブランドでパソコン事業に再参入。ピーク時の2010年度には約870万台を出荷したが、その直後に同事業は傾いた。中国勢などの低価格攻勢に加え、一般ユーザが情報端末をスマートフォン(スマホ)やタブレットへシフトしたため販売不振に陥った。13年度の出荷台数は560万台に落ち込み、同年度のパソコン事業は営業損益が917億円(事業収束費含む)の大赤字に陥った。

 エレクトロニクス事業の黒字転換を最優先に掲げる同社は、テレビ事業の分社化と並ぶリストラの両輪として今年2月、パソコン事業売却を決定。新会社としてスタートすることとなった。売却前に約1100名いたパソコン事業部門の社員は配置転換や希望退職により約240名まで減少。最後まで残ったこの240名が、同事業の継承と再生を目指すことになった。

 ソニーの構造改革担当バイス・プレジデントから社長として新会社へ移籍した関取高行氏は、7月1日に都内で開催した記者会見で「1000人規模からわずか240人の規模になった。だが、小規模だからこそ思い切った事業の集中と選択ができる。市場の環境変化にも迅速に対応できる。ユーザがパソコンに求める本質を突き詰め、一点突破の特徴を持ったパソコンをつくり出す」と強調した。

 だが、関取氏が会見で語ったのは「本質の追求、制約の排除、VAIOのDNA継承」などの企業理念と、VAIO上位モデルは長野県安曇野市内の本社工場で開発から製造まで社員全員が関わる「全社一体の物づくり」を行い、標準モデルは台湾などのEMS(電子機器受託製造サービス)メーカーで生産するが、仕上げと検品は本社工場で行う「安曇野フィニッシュ」で品質を保証するなどの「物づくり体制」の2点だけ。肝心の商品戦略や成長戦略に関しては、記者たちから質問されても「それはこれから」と口を濁すばかりで、具体的に答える場面はなかった。

 このため、関取氏が示した「VAIO再生計画」は不透明な部分や懸念材料がかえって浮き彫りになり、記者席には失望や欲求不満の空気が渦巻いた。

●限定された販売チャネル

 記者会見に出席した電機業界担当の証券アナリストは「商品戦略や成長戦略の曖昧さはもとより、これから新会社が食べてゆくための生産・販売計画も疑問だらけの会見だった。これでは『VAIO再生計画』の先が思いやられる」といい、次のような問題点を指摘する。

 新会社は当面、販売を国内市場に限り、初年度(15年度)30-35万台の生産を目指すという。ソニーが昨年度出荷したVAIOの国内台数が70万台程度だったので、まずはその半分程度になる。だが同アナリストは「これでもかなり強気の計画」と心配する。ソニー時代に比べ、ラインナップが急減する上に販売チャネルも心もとないからだ。

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