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新生VAIO本格始動、なぜ早くも失望感広がる?曖昧な商品&販売戦略に疑問続出

文=福井晋/フリーライター
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 新会社が7月8日、ソニーから引き継ぎ発売したVAIOは上位モデルの軽量薄型ノートパソコン「VAIO Pro 11/13」と標準モデルのノートパソコン「VAIO Fit 15E」の2機種のみ。ソニー時代に「花形」と呼ばれた「VAIO Duoシリーズ」や「VAIO Fit Aシリーズ」、タブレット型「VAIO Tapシリーズ」などは引き継がなかった。ユーザはそれだけ選択肢が減り、VAIO自体への関心も薄れてしまう。

 また、ソニー時代は家電量販店をはじめ多彩な販売チャネルを駆使していたが、流通経費を圧縮するとの理由で、一般ユーザ向けは2チャネルに絞り込んだ。具体的には総代理店契約を結んだソニー・マーケティング系列の「ソニーストア」(ネット通販サイト)と、全国25店の「e-ソニーショップ」(ソニー販売代理店)のみ。他に大手家電量販店が一部店舗で製品展示と注文取次を行う。

 同アナリストは「一般ユーザのソニー離れが進んでいる今、その販売がソニー系列チャネルのみとはいかにも心細い。実店舗販売は1チャネルで良しとしても、ネット通販はどうして販売力のあるアマゾンや楽天市場を入れなかったのか」と不思議がる。

 一方、法人向けは、前者とは対照的にIT専業大手流通4社(大塚商会、シネックスインフォテック、ソフトバンクコマース&サービス、ダイワボウ情報システム)と代理店契約を結んでいる。「目標を達成するため、一般ユーザ向けの『小商い』より法人向けの『大商い』を優先した」(IT系メディア関係者)といわれるが、関取氏はこの点についても記者会見で明言を避けている。ソニー時代のパソコン事業は、競合他社と異なり、ほとんどが一般ユーザ向け。法人向けは海外を含めて全体の10%に満たなかった。法人向け販売のノウハウは乏しい。

 加えて関取氏はソニーのエンジニア出身。「実質的な営業経験はゼロに等しいので、『数を一気に稼げる法人向けを』と安直に考えたのだろうが、それも流通4社への丸投げ。販売計画が大雑把で他人任せの感が否めない」と、同アナリストは懸念を示す。

●具体像示されない商品戦略

 商品開発についても関取氏は、「パソコンの革新性を求める国内のVAIOファンをターゲットに絞り込むので、ワールドワイドの幅広いユーザに満足してもらう中途半端なVAIOを開発する必要はなくなった。したがって、これからは市場トレンドに深く根ざした、他社にはない『本質+α』の価値を持ったVAIOを開発する」と強調。他社のパソコンと比較し、機能と価格のバランスで買ってもらうパソコンではなく、指名買いしてもらえるパソコンだけを開発するとも受け止められるが、ここでも関取氏は「指名買いしてもらえるVAIO」の具体的イメージ、スペック、市場投入時期などの質問には口を濁し、「VAIOファンに驚きを与えたい、夢を与えたい」など、抽象的な回答を繰り返すばかりだった。

 ソニーOBの一人は「関取氏は、今のソニーが完全に忘却してしまった東京通信工業(ソニー前身)の設立趣意書『真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場』の精神を復活させたいと、社長の重責を引き受けた経営者。かつてのソニーらしい、とんがった物づくりをしてほしい」とエールを送る。

 一方、別の証券アナリストは「ソニーの物づくりの原点に、という志は大いに評価したい。だがパソコン市場が急速に縮小する中、どのような『本質+αのパソコン』をいつ開発して見せてくれるのか。時間的な余裕は、あまりにも限られている」と、VAIO再生計画のリアリティー感の乏しさに顔を曇らせる。

 ソニー関係者の期待を担ってスタートした新会社だが、その行く手は多難が予想される。
(文=福井晋/フリーライター)

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