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韓国、景気低迷リスク上昇と企業競争力低下で苦境か 日本経済は基礎的状況が安定

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韓国・ソウル(「Wikipedia」より)
 2014年4月の消費税率引き上げは、その後の不順な天候の影響もあり想定以上の景気減速をもたらしている。消費支出や企業の在庫水準などに軟調な動きが見られ、景気減速リスクを指摘する報道も増えている。メディアの報道の中にも、「アベノミクスは所得増加につながっていない」「消費税の引き上げは見送るべき」といった声も出ている。ただ。冷静に足元の状況を考えると、アベノミクスを受けて、わが国の経済の基礎的な状況=ファンダメンタルズは世界経済の中でも相対的に安定している。実体経済の強化のために、これをいかに活用するかが重要だ。

 一方、景気に対する懸念は隣国の韓国でも上昇しており、日本型の景気低迷リスクもささやかれ始めた。4~6月期、消費低迷などを背景に韓国の実質GDP成長率は予想を下回った。成長見通しも下方修正され、中央銀行は利下げを決定した。この背景には、韓国ウォン高を受けた企業収益の低下が影響している。政府も、住宅ローンに関する基準緩和の実施、大企業の内部留保に対する課税の検討などを進めているようだ。

 韓国経済の課題は輸出の伸びが内需拡大につながっていない点だ。つまり、構造改革が必要だ。一例として、財閥中心の経済構造の是正、技術力の引き上げ、中小企業の育成が求められる。韓国の家計債務は国際的にも高く、是正が望まれている。為替レートに関してもIMF(国際通貨基金)は積極的な介入をけん制している。現在の政策は課題の修正にはつながらない可能性が高い。

 そうした課題がある中、韓国は中国との関係を強化している。韓国の輸出にとって中国は最大のパートナーであり、人民元での資金決済も拡大している。一方、スマートフォン市場では中国メーカーの台頭を受け、韓国勢の競争力は低下している。韓国の技術貿易収支は赤字であり、韓国企業の競争力は高いとはいえない。グローバルな競争激化により、製品のライフサイクルが短期化しやすいことを考えると、わが国のインフラや免震技術、高機能素材などのように、産業を支える技術力なくして競争には勝ち残れない。競争力引き上げのための改革がない限り、為替レートに振り回される景気循環から抜け出すことは容易ではないだろう。

●アベノミクスの真価


 日本企業は円高の環境下でも海外での収益力を高め、競争力を維持してきた。これを支えたのは、自社の技術力を引き上げようとする経営のコミットメントだろう。2011年の東日本大震災後に自動車生産において世界的混乱が生じたことは、日本の技術が競争力を有している証しである。今後は技術力強化へのさらなるコミットメントが求められる。政策面からは規制の緩和、市場原理の導入によるイノベーション喚起が重要だ。

 アベノミクスは将来への期待を高めるという点で一定の効果を果たした。ここにアベノミクスの真価がある。経済政策の重要性は、アニマルスピリットに働きかけ、消費者や経営者のマインドを前向きにさせることにある。それが成長源泉である企業の業績に働きかける。今後の政策議論には、企業の競争力の引き上げによる潜在成長力の強化に焦点があてられるべきだ。企業経営者も積極的に政策議論に参画していくべきだろう。
(文=真壁昭夫/信州大学経済学部教授)