●第10位 『日本を救ったリフレ派経済学』(原田泰/日経プレミアシリーズ)
今年の国内経済問題の多くは、アベノミクスの成果と消費増税をめぐるものに終始した感があります。アベノミクスとは、3本の矢から成るもので、具体的には金融政策、財政政策、成長戦略です。アベノミクスの指南役といわれる浜田宏一イェール大学名誉教授(内閣府参与)によれば、それぞれの政策の評価はA、B、Eの順、つまり「ABE(安倍)」だそうです。本書では、最高のA評価を与えられた金融政策の成果を、実体経済の多様な回復傾向として具体的に解説しています。
●第9位 『官愚の国』(高橋洋一/祥伝社黄金文庫)
筆者の高橋氏といえば当代きっての経済政策通でしょう。本書は2011年に出版されたものに加筆・修正したもの。「官愚」とは高橋氏の造語であり、日本の権力機構が官僚依存に陥り、しかも官僚は政策に圧倒的な影響力を及ぼす半面で、なんの責任も問われない位置にある。そして官僚の無責任な行動の多くが、日本社会にとって膨大な無駄を生み出して日本国を蝕んでいると指摘しています。高橋氏が次々と繰り出す具体的な「官僚の失敗」のエピソードは恐ろしくもあります。
●第8位 『年収は「住むところ」で決まる』(エンリコ・モレッティ/プレジデント社)
多くの地方自治体が財政的に維持不可能であり、やがて消滅していくとした増田寛也氏の『地方消滅』(中公新書)は今年の話題書のひとつでした。モレッティ氏は、このような地方自治体の消滅について、一定の対策を提起していると考えられます。簡単にいうとそれは「集住を促す補助金」です。地方自治体のサービスが受けにくくなる地域から、地域の都市部に一極集中したほうが地方の活性化につながる可能性が大きい。本書の提起は今後議論を集めそうです。
●第7位 『その問題、経済学で解決できます』(ウリ・ニーズィー、ジョン・A・リスト/東洋経済新報社)
これはなかなかエグい人間の本性を追求した経済書だといえます。他人のことを思いやる気持ちよりも、自分勝手な動機を刺激したほうが寄付はうまくいくと著者たちは実証しています。例えば、発展途上国で口唇裂に悩む可憐な少女の写真を掲載したほうが、しない場合よりも寄付が多くなるとか。今年の夏に流行したアイスバケツチャレンジも、「目立ちたい」「みんなと同じブームにのりたい」という自分本位の感情を刺激したからかもしれません。